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ヌートバーが両親から「仕事をしろ」と言われた日…朝4時から週6日の肉体労働、本人が振り返る「現実と向き合う経験になった」ハードな夏
text by
ブラッド・レフトンBrad Lefton
photograph byNanae Suzuki
posted2023/03/13 11:00
明るい笑顔が印象的なヌートバーだが、野球人生においてターニングポイントとなった“ハードな夏”があった
「母の旧姓は榎田といって日本で生まれ育った日本人だと伝えた。『まだ何も決まってはいないけれど、もし侍ジャパンに選出されたときは興味があるか知りたい』と。“マジか!”と。でも、考える理由なんてないでしょう。その場ですぐに『イエス』『オフコース』と答えたんだ。『それなら、資格などを確認するので頭の中に入れておいてください』と言われて。とても嬉しかったよ。でも、その時点ではまだ遠い話だったから、できるだけ気持ちを抑えたんだ」
プロスペクトが直面したコロナ禍
約2カ月後。南カリフォルニアにある実家からオンラインで栗山英樹監督と初めて顔を合わせ、選出が決定したと伝えられた。こうして日系人の現役メジャーリーガー初の侍ジャパンが誕生した。
一昨年、メジャーデビューした新星は、埼玉県東松山市出身の母久美子とオランダ系アメリカ人の父チャーリーの間に3人きょうだいの末っ子として1997年に生まれた。野球の名門、南カリフォルニア大3年時にカージナルスから2018年メジャードラフト8巡目で指名され、幼い頃から抱いていたプロ野球選手という夢を叶える大きな一歩を踏み出した。
ところが入団間もなく悪夢が襲う。2年目の2020年にコロナ禍でキャンプが突然中止。その後、メジャーは再開したが、マイナーリーグの全日程がキャンセル。そのためヌートバーはダブルAまでたった157試合にしか出場できず、選手として成長する最も大事な時期に野球ができなくなってしまった。
空きのケージを探して打ちまくる日々を過ごすのはダメ
カリフォルニアにある実家に帰り、打撃コーチの知り合いを呼んで毎日トレーニングに集中するつもりだった。しかし、その計画も変更を余儀なくされた。