「福島さんには表彰式で『もっと上にいけると思うから頑張ってね』と言っていただきました。お話しできたのはあの時が初めてでしたね。実は小学生の時に一度だけお会いしているんです。全国大会の優勝者を集めた研修会に来てくださって。質問コーナーもあったのですが、私は何にも聞けませんでした（笑）。その時に撮った写真は今も大事にとっていて、ずっと目標であり憧れの選手です」

昨年1月に引退を発表した福島千里。兒玉にとっても憧れの存在だった　©JIJI PRESS

児玉が挙げる「一番の課題」

　今年8月のブタペスト世界選手権・女子100mの参加標準記録は11秒08。個人種目での出場を目指す兒玉は「11秒0台」との目標を掲げており、そこに向けた課題も明確になっている。

「現状としては低い姿勢のままでいかに加速距離を伸ばせるかが一番の課題ですね。イメージとしては加速している状態でゴールできるくらい伸ばしていく。絶対無理な話ではあるんですけれど（笑）。でも、自分が40mくらいのつもりで走っていても、結果的に20mしか加速できていないことに気づいたので、なるべく引っ張れるだけ引っ張ろうという意識で練習しています」

練習拠点の母校・福岡大学でトレーニングを行う兒玉　©Asami Enomoto

タイムは結果として付いてくるもの

　大学3年で歴代3位の11秒35を出した時は、タイムに自らの気持ちが追いつかず、周囲からの期待にも揺れた。だが、目指すものが明確になった今は、心の持ちようも大きく変化している。

「大学3年で記録が出た後は気持ち的に辛かった部分もあったので、今はなるべく自分の走りに集中して、どうしたら自分が一歩でも上の世界にいけるかだけを考えるようにしています。タイムは結果として付いてくるものなので、まずは自分が思い描く走りができることが一番の目標ですね」

　福島が持つ日本記録・11秒21の更新は、その“一歩でも上の世界”への道中にあるのだ。

©Asami Enomoto

　＜続く＞