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福島千里の日本記録に0.03秒差と肉薄、兒玉芽生23歳に聞いた“女子短距離界はなぜ低迷していた?”「難しい話ですよね」「男子に比べ女子は…」
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph byAsami Enomoto
posted2023/02/23 11:01
母校・福岡大学で練習に励む兒玉芽生(ミズノ)。日本記録まで0.03秒に迫っている現100m女王に、女子短距離界について聞いた
一方で男子100mは2017年に、桐生祥秀(当時東洋大、現日本生命)が日本人初の9秒98をマークすると、その後もサニブラウン・ハキーム(当時フロリダ大、現タンブルウィードTC)ら3選手が9秒台をマーク。歴代10傑のうち、7つがこの6年間で更新されたタイムだ。
五輪や世界選手権のたびに、男子100mの代表争いが熾烈を極める中、女子は2016年のリオ五輪に福島が出場して以来、主要な国際大会に代表選手を送り込めていない。
世界で戦うというイメージが漠然とし過ぎていた
兒玉は「難しい話ですよね……」と言葉を選びつつ、肌で感じる男子との差についてこう語る。
「男子のスプリントは安定して強い選手が複数人いる中でハイレベルな争いをしていますよね。その一方で女子は、日本選手権の決勝に残る選手が毎年のように入れ替わり、安定して高いレベルで競い合うことができていないなと思うんです。
決定的に何が違うのかは分かりませんが、男子のトップ選手は世界を見据えて戦っているのに、女子選手はインカレや日本選手権など、カテゴリー内の優勝争いに留まっているのかなと。
私自身、大学生の頃から『世界を目指したい』との思いはありつつも、目先の国内大会で勝つことにとらわれていた部分はありました。東京五輪で代表を背負うまでは、世界で戦うというイメージが漠然とし過ぎていたと思います」
福島千里の台頭で生まれた「ある傾向」
日本女子短距離は、2008年に福島が台頭して以来、約10年にわたり“福島一強時代”が続いた。
日本選手権では驚異の6年連続スプリント二冠。08年の北京五輪女子100mで日本女子56年ぶりの出場を果たすと、12年ロンドン、16年リオと3大会連続で代表に。11年のテグ世界選手権では、100m、200mともに、日本女子初の準決勝進出を果たしており、その功績は圧倒的だった。
福島以前に活躍した女子200m元日本記録保持者の信岡は、福島が“絶対的エース”として一時代を築く中で、女性選手にある傾向が生まれた――と見ている。