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「慶應のエルドレッド」と騒がれて…“取材が苦手だった”元楽天・岩見雅紀が明かす“なぜ活躍できなかったか?”「まあ、あえて言うなら…」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2023/02/20 11:04
昨年、楽天から戦力外通告を受けた岩見雅紀。年末のテレビ番組出演、そしてスカウト転身の裏側を語った
「運とかもあるじゃないですか。そこで環境とか誰かのせいにしたくないし。だからといって、『これが原因で打てませんでした』って断言してしまうと悔しいところもありますし。でもまあ、あえて言うなら、プロの球に対応しきれなかったってところじゃないですか。そこで焦っちゃった……ということで」
スカウト転身の裏側
NPBでの現役続行にこだわり臨んだ11月の合同トライアウトでは、4打数ノーヒットに終わった。参加者はここから1週間ほど、他球団からのオファーを信じスマートフォンを手放せなくなる。岩見もそうだった。
楽天からスカウト転身の提案があったのは、その期限の最終日だった。
戦力外を受けた際には、そんな話題が一切なかっただけに、虚を突かれた。球団から「できるだけ早く回答がほしい」と告げられ少し困惑しながら、岩見は一つひとつ状況を整理し、冷静な決断を自らに課した。
「独立リーグでやるつもりはない。社会人野球からはオファーがない。海外リーグも選択肢にはあったのかもしれないですけど、スカウトはお願いしてもできる仕事じゃない。そう考えて、受けることにしました」
1月下旬。岩見の仕事姿はユニフォームからスーツに変わった。
中国・四国地方の担当となった岩見は、高校や大学などへのあいさつに奔走する。まだシーズンオフであるため、試合は見ていない。とはいっても、少しずつスカウトのシビアさを肌で感じ始めているのだと、襟を正す。
「ドラフト候補と呼ばれる選手の評価は難しいですよね。どこを見て、どう評価するのか? 仮に今年、僕が担当した地区の選手がドラフトで指名されたとしても、その答えが出るのってスカウトした選手が辞める時じゃないですか。そういうところまで考えると、難しいんだろうなって」
逸材を見定める岩見の眼が光る。
奇縁と言うべきか、担当する中国・四国には高校通算49ホームランを誇るスラッガー、広陵の真鍋慧がいる。189センチ、90キロと恵まれた体躯の左の長距離砲。今年のドラフトで上位候補にもなりうる金の卵を、言うまでもなく岩見は視察済みである。
「高校生離れした体格とスイングは魅力的ですよね。これ以上、余計なことを言わないようにしておきます(笑)」
第二の野球人生。岩見の、スカウトとしての情報戦は、すでに始まっている。
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