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「ものすごい罵声とブーイング」若き武藤敬司がアメリカで“大ヒール”になった夜…「日本人=姑息なヒール」ステレオタイプはこうして壊れた 

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堀江ガンツ

堀江ガンツGantz Horie

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posted2023/02/17 17:02

「ものすごい罵声とブーイング」若き武藤敬司がアメリカで“大ヒール”になった夜…「日本人=姑息なヒール」ステレオタイプはこうして壊れた<Number Web> photograph by AFLO

“悪の化身”グレート・ムタとしても人気を博した武藤敬司

「大谷(晋二郎)の件もやっぱり影響してるよね」

 そんな武藤が昨年6月、ついに翌春引退することを発表。長年ヒザのケガに悩まされ2018年には人工関節手術を行い、それでも痛みに耐えながら現役を続けてきたが、ヒザに続き股関節のケガもいよいよ深刻となったことでついにドクターストップがかかり、リングを降りる決断をした。

「俺も還暦という一般のサラリーマンが定年を迎える年齢になり、老後の生活も考えるわけだ。周りを見渡すと、俺の尊敬する天龍(源一郎)さんをはじめ、引退した先輩たちの多くは車椅子になっていたり大変そうなんだよ。まともに歩ける人はほとんどいない。同期の蝶野も腰を痛めて杖をついているしね。それプラス、俺に引退を考えさせたのは、大谷(晋二郎)の件もやっぱり少なからず影響しているよね」

 昨年4月、武藤の新日本時代の後輩であるZERO1の大谷晋二郎が、試合中の事故で頸髄損傷の大怪我を負い、現在も首から下がまひ状態であると報道されている。

「ああいうのを観たら、いつ自分がそうなってもおかしくないと思ったんだ。歳を重ねるとそういうことが起こる可能性がだんだん大きくなる怖さも感じるし、ただでさえヒザも股関節もかなり悪いわけだから。大きな事故が起こらないにしても、これ以上悪くなったら将来家族に苦労かけてしまうからね」

 そう語っていた武藤だったが、大事な引退試合を1カ月後に控え大きなケガを負ってしまう。1・22横浜アリーナで行われたグレート・ムタとしてのラストマッチ(ムタ&スティング&ダービー・アリンvs.丸藤正道&白使&AKIRA)の試合中、両脚太ももの肉離れを起こしてしまったのだ。

現役生活は、ヒザの痛みとの戦いだった

 ケガをした1週間後に取材した際、武藤はこう語っている。

「あれから1週間経ったけど、ちょっと回復が遅いというか、現時点では歩くのもままならないんだよ。あと3週間しかないから、気持ち的にはかなり追い込まれてますよ。プロレスの神様が最後の最後、俺に試練を与えたなって。

 俺は前からヒザは悪かったけど、ああいうのは慢性的なケガで、どちらかと言うとじわじわした痛み。でも、この筋肉の痛みっていうのはもう激痛だからさ。歩けなくなっちゃうんだよ。だからいまホントに困ってるし、焦ってますよ。3週間でどこまで回復してくれるのか、俺もわからねえ。すべてが初めてだから。

 みんなから『これぞベストバウトだ!』って言われるような試合を最後にしたいけど、今は強気な言葉が出てこねえ。今回の俺のライバルは対戦相手の内藤じゃなく、俺自身なんだよ。でも、最善を尽くしてありのままの自分を見せるしかないからね。今は恐怖心に負けそうだけど、やるしかねえよ」

 武藤敬司の長い現役生活の3分の2は、現在は人工関節となっているヒザの痛みとの闘いだった。今回の両脚のケガによって、皮肉にも引退試合はそんな武藤のレスラー人生の縮図のような試合になるかもしれない。そこで武藤がどんな生き様を見せてくれるのか。「天才」と言われ続けた男が、これまでで最も必死になって闘う姿を見届けたい。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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