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「いまだ未勝利」なのに大声援…プロレスラー・月山和香が観客を夢中にさせるワケ「才能もない。努力の成果も出ていないかも。でも…」 

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原壮史

原壮史Masashi Hara

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photograph byMasashi Hara

posted2023/02/09 17:02

「いまだ未勝利」なのに大声援…プロレスラー・月山和香が観客を夢中にさせるワケ「才能もない。努力の成果も出ていないかも。でも…」<Number Web> photograph by Masashi Hara

「声出し解禁」となった2月4日のスターダム大阪大会の第1試合に登場した月山和香(奥)。“アイコン”岩谷麻優を超えるほどの大声援を浴びた

 言葉だけならば突き放されたようにも思えてしまうが、中野に発破をかけられたことで月山の勝利への思いは増した。初代ワールド・オブ・スターダム王者の高橋奈七永に「私は強くなりたい!」とパッション注入マッチを直訴し、1月20日の『NEW BLOOD 7』で一騎打ちが実現した。

“未勝利レスラー”への大声援が生まれるワケ

 今になって振り返れば、この試合で大阪の大声援の予兆があった。

 月山は敗れたものの、試合後に高橋が「どちらのパッションが深く届きましたか?」と問いかけると、月山への拍手の方が大きかった。負け続ける月山への同情票ではなく、戦う姿を見た観客のストレートな反応だった。高橋は「すごく気持ちがお客さんに伝わる選手だと思う」と彼女を評した。

 試合をしてきた選手たちにも、彼女の勝ちたい気持ちの強さは伝わっている。いまやユニットに関係なく彼女の勝利を待ち望んでいる、と言ってもいいかもしれない。月山への大声援を聞いた岩谷は驚きや不満だけでなく、どこか嬉しそうだった。1月21日に10人掛けを行った王者ジュリアも、グロリアスドライバーをキックアウトされてまさかの3分時間切れになってしまったことを悔いながらも、やはりどこか嬉しそうだった。もちろん、それは勝ちを譲るのではなく、月山が本当の強さを手に入れるための、より高く分厚い壁として立ちはだかることへと繋がるのだが。

 声援が届かない間に3ケタの敗戦を記録した月山は、負け続ける中で同情される時期や、どうせ負けるのだろうと思われる時期もあった。しかし、戦いでも振る舞いでも「勝ちたい」という真っ直ぐな気持ちを伝え続けてきた彼女は、そういった見方をしていた人の心も「彼女の勝利が見たい」と願う気持ちに変えてきたのだ。「負け続けているから応援してあげる」ではなく、「勝ちたい気持ちが誰よりも伝わってくるから応援したい」へと。そうでなければ、あれほどの大声援は生まれない。

「才能もない。努力の成果も出ていないかもしれない。でも、仲間には恵まれてるなって。それはかけがえのない幸せだと思うので、この絆がずっとずっとずっと続くように」

 そう語る彼女は、声援という観客との絆も強さに変えるだろう。

 月山がジュリアのように穏やかな表情でリングから帰っていくことができる日はいつ訪れるのだろうか。彼女は勝利の期日となる3月25日、『NEW BLOOD』横浜武道館大会で高橋との再戦を直訴している。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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