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北大法学部卒→外資系企業から異例の転身…スターダムで奮闘する月山和香(30歳)はなぜプロレスラーになったのか?《特別グラビア》

posted2022/09/09 17:02

 
北大法学部卒→外資系企業から異例の転身…スターダムで奮闘する月山和香(30歳)はなぜプロレスラーになったのか?《特別グラビア》<Number Web> photograph by Essei Hara

北大卒業後、外資系企業での会社員生活を経てプロレスラーとなった月山和香。インタビュー前編ではそのユニークな経歴を振り返ってもらった

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原悦生

原悦生Essei Hara

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Essei Hara

北海道大学を卒業した才媛は、なぜプロレスの世界に足を踏み入れ、いまだ手の届かない“勝利”を目指してもがき続けるのか。女子プロレス団体「スターダム」で奮闘する月山和香選手のインタビューをお送りします。(全2回の1回目/後編へ)

 スターダムのユニット「コズミック・エンジェルズ」に所属する月山和香は、アメリカのニューヨーク生まれ、北海道大学法学部卒という履歴書映えのする経歴を持っている。30歳の月山には、それに「未勝利」というフレーズがかぶさる。

 月山がスターダムにやって来て間もない頃だったろうか。立ち寄ったスターダム道場で筆者が目撃した月山は、トップロープ上で立ち尽くしていた。厚い安全マットも敷いてあったのだが、怖くてなかなか飛べないようだった。

「高所恐怖症なんだと思います。トップロープに立つまではできましたが、そこから飛ぶのはやったことがなかった。コーナーって、いざ立つとめっちゃ高いんです。着地に失敗したら足首が折れるくらいの高さ。中野たむさんに練習を見てもらって、泣きながらやりました。人って慣れるんですね。今はもう大丈夫です。でも、最初は怖かったなぁ……」

アメリカで過ごした幼少期「1人が大好きでした」

 スターダムに初めて参戦して1年が過ぎたが、月山はいまだに勝利の味を知らない。プロレスに真剣に取り組んでいるが、むしろ真逆のコミカルさが漂う。本人にその気はないのだろうが、真剣に取り組めば取り組むほど、はた目にはそう写ってしまう。

 アメリカ生まれの帰国子女で、しかも北大法学部卒という経歴だけを見ると、かなりのエリートコースを歩いてきたように思ってしまう。なぜ、プロレスラーの道を選んだのだろうか。

 ニューヨークで幼少期を過ごした月山は、もちろんバイリンガルだ。

「家では両親と日本語でしゃべっていましたが、お外では英語。あまり記憶にはないんですが、自然に話していたと思います。アメリカでは子どもがいっぱいいる託児所みたいなところに通っていました。寡黙で、1人が大好きな子どもで、本読んだり、ブロックで遊んだり……。でも、あっちの子って気が強いので、私がせっかく作ったブロックを崩すんです(笑)」

 月山は長女だが、兄がいて、下には双子の妹と弟がいる。

 5歳のころ、月山は家族とニューヨークから東京に移り住んだ。他の子と同じように保育園にも通ったが、友達はいなかった。だが、月山がそのことに気づいたのは中学に入ってからだった。

【次ページ】 「学校に通えなかった子」が北大に合格するまで

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