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「いまだ未勝利」なのに大声援…プロレスラー・月山和香が観客を夢中にさせるワケ「才能もない。努力の成果も出ていないかも。でも…」
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2023/02/09 17:02
「声出し解禁」となった2月4日のスターダム大阪大会の第1試合に登場した月山和香(奥)。“アイコン”岩谷麻優を超えるほどの大声援を浴びた
しかし、この日は本戦開始前の第0試合はなく、新日本プロレスで高橋ヒロムが見事にやってみせたような前説もなさそうだった。
一体どんな雰囲気になるのだろう?
長い間、拍手と手拍子で選手たちを後押ししてきた観客席は、果たしてリングへ声を送ることができるのだろうか?
不安を含んだ疑問は、会場に入っても、そして照明が落とされて大会が始まっても消えなかった。
観客のボルテージを一気に高めた月山和香
ところが、そんなおせっかいな不安はあっという間に吹き飛ばされた。
第1試合の15選手によるシングル勝ち抜き戦“浪花ルーレット”で2番目に月山和香が入場すると、観客席のボルテージが一気に沸点に達したのだ。その前に“スターダムのアイコン”岩谷麻優が、この試合形式の言い出しっぺでありながら1番目の入場という貧乏くじ(勝ち抜き戦なので早く入場すると不利)を引き当ててしまい、それによる笑いによって空気が少し温まっていたとはいえ、紛うことなき大声援が月山を包み込んだ。
試合開始のゴングが鳴らされると、声援による盛り上がりはさらに大きくなった。あっという間に、所謂「かつてのプロレス会場らしい雰囲気」が出来上がっていた。月山が岩谷に対して積極的に仕掛けると、まるでメインイベントのタイトルマッチ終盤のようなテンションの大声援が彼女に送られる。フォールをしてみれば1回目から「ワン! ツー!」と大合唱だ。
その後、刀羅ナツコが花園桃花のシャボン玉機を破壊すれば笑いが起こり、レディ・Cが小波をジャイアントスイングで回せば全員でカウントし、橋本千紘がMIRAI相手に圧巻の強さを見せつければどよめき、ひめかが足を痛めながらも戦い続ければ懸命に後押しし、場外に飛ぼうとした上谷沙弥に渡辺桃がボックスを投げつければブーイングが起き……などなど、声援のある大会は様々な反応を伴いながら大いに盛り上がり続け、最後はジュリアと観客席との掛け合いで見事に幕を閉じた。
そんな大会の素晴らしい雰囲気を決定づけたのは、月山に向けられた最初の大声援に違いなかった。“アイコン”岩谷よりも大きく、大会後半のタイトルマッチと肩を並べるほどの大声援が彼女に送られたのは、なぜなのだろう。