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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「ジュリアvs鈴季すず」はなぜ“最高に映える”タイトルマッチだったのか? 試合直後の“姉妹”が明かしたそれぞれの「25分4秒」
posted2023/02/11 11:04
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
「体感時間は5分くらいでした。それだけ集中してましたね」
試合を終えた鈴季すずは笑った。実際の試合タイムは25分4秒だった。
2月4日、スターダムのビッグマッチ。会場はエディオンアリーナ大阪第一競技場である。フリーランスのレスラーとして参戦しているすずは、メインイベントで“赤いベルト”ワールド・オブ・スターダムに挑戦した。団体の頂点に位置するベルトだ。
チャンピオンはジュリア。12月に朱里を下して戴冠し、これが初防衛戦になる。ジュリアとすずは、同じ団体でデビューした“姉妹”だった。
ジュリア突然の退団、すずは泣きながら誓った
ジュリアは2017年10月、アイスリボンでデビュー。すずはすぐ下の後輩で、翌2018年にプロレスラーになった。寮では相部屋、運営会社の社員としても一緒に働き、もちろん練習も。24時間2人で過ごし、夢を語り合い愚痴もこぼした。すずは中学を出てすぐ地元の宮崎から出てきたから、8歳上のジュリアに“世の中”を教わったようなものだった。
道が分かれたのは2019年10月のことだった。ジュリアがアイスリボン退団を宣言、スターダムに参戦する。選手の誰にも相談せず、1人で決めた。円満とは言えない形だったから、話が漏れるわけにはいかなかった。事前に知っている者がいたら、やめた後に迷惑をかけてしまうことになるかもしれない。
ジュリアとしては、とにかくアイスリボンを離れたい理由があった。スターダムでは練習生から再スタートしてもいいと思っていた。それも叶わなければ、プロレス界から去るしかない。
“姉”が退団したことで、すずのキャリアも変わった。ジュリア退団表明直後の大会、すずは泣きながら「これからのアイスリボンは自分が引っ張る」と語った。次期エース候補として期待されてきたジュリアはもういない。だったら自分がやるしかない。
それから何度もベルトに挑戦、2020年にシングルチャンピオンになる。すずはまだ17歳だった。ジュリアの不在が彼女を成長させた。“若手”ではいられなくなったということでもある。