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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「ごめんなさい…」ジュリアと鈴季すずは、テキーラ沙弥の胸に飛び込んだ…スターダム王座戦のバックステージに現れた“もう一人の主人公”の物語
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/02/11 11:05
2月4日のタイトルマッチ終了後、バックステージで再会したジュリアと鈴季すず、そしてテキーラ沙弥
「タイトルマッチを見にくるって…びっくりしましたね」
この時でも、まだ言えないことがあった。教えてくれたのは、沙弥との対面を終えた直後のインタビューだ。
「スターダムにきて、ずっと気がかりだったことが2つあったんです。一つはアイスリボンに残してきた“妹”の鈴季すずのこと。もう1つがテキーラ沙弥のこと。だけど、やめた自分のほうからそれを言うわけにはいかなくて」
スターダムに行くことは誰にも相談しなかった。外に漏れるわけにはいかなかった。スターダムのリングで参戦表明する直前になって、アイスリボンのグループLINEで報告をした。
「今だからそれも言っていいと思うんですけど。それと参戦表明のすぐあと、沙弥さんにだけ個人的にLINEしました。でも返信はなかった。連絡を取り合ったのはそれ以来です。すずとのタイトルマッチを見にくるって……びっくりしましたね。でも本当によかった。やっと気持ちが晴れました。感謝してます」
私のほうこそ、あのとき返信しなくてごめんね。沙弥からはそう言われたという。「飲みに行こう」と誘ったら沙弥はお酒をやめていたので、アフタヌーンティーに行くことにした。「テキーラ沙弥がお酒をやめてたのは衝撃でしたね」とジュリアは笑う。もうなんのわだかまりもなかった。沙弥、すずと3人で写真を撮った。沙弥とはバーニング・ロウの決めポーズも。
2月4日の「ジュリアvsすず」がもたらしたもの
いつかこんな時がくればいいと、みんなが思っていた。同時に無理かもしれないとも思っていた。だけどその時は訪れた。ジュリアは赤いベルトを巻き、すずはそれに挑戦するポジションに駆け上がった。沙弥も含め、全員が自分から行動を起こしたから人生が動いた。
2月4日、ジュリアが得たのは初防衛の栄光だけではなかった。救い、あるいは赦し。スターダムでの奮闘が、ベルトや賞という形以外でも報われた。
「私は大事な妹を捨ててここ(スターダム)に来た。でも、いつか必ず道が交わるって信じてたよ。ジュリアのこと忘れないで、ここまできてくれて本当にありがとう」
試合後のリング上でジュリアは言った。すずだけでなく、試合を見届けてくれた沙弥にも聞かせたかった言葉ではないか。“美しき狂気”と呼ばれるジュリアは本当は涙もろく、涙もろいからこそ狂気をまとう闘いが必要だった。その魅力的な二面性が、これからはさらに深みを増すような気がする。
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