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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「ごめんなさい…」ジュリアと鈴季すずは、テキーラ沙弥の胸に飛び込んだ…スターダム王座戦のバックステージに現れた“もう一人の主人公”の物語
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/02/11 11:05
2月4日のタイトルマッチ終了後、バックステージで再会したジュリアと鈴季すず、そしてテキーラ沙弥
時は流れ、沙弥は“プロ一般人”として関わっていた団体スタッフの職も辞した。一時期は芸能活動をしていたが、今は本当に“一般人”だ。
すずもフリーになった。デビュー前からの希望だったデスマッチを思う存分やりながら、スターダムにも参戦。当初は凶器攻撃がファンの怒りを買って「襲撃予告まできました」という状態だったが、次第にその実力が認められるようになった。小気味いい動きと小さい体から溢れるほどの感情は、どのリングであっても見る者の心を掴む。
ジュリアは昨年12月に赤いベルトのチャンピオンになった。初防衛戦の相手がすずになるのは、必然と言ってよかった。ジュリアもすずも成長し、ステップアップして、最高の舞台でタイトルマッチをすることになった。沙弥も2人の闘いを見届ける決意をした。ジュリアに連絡がきたのは、試合の1週間ほど前だった。
「ごめんなさい…」ジュリアとすずは沙弥の胸に飛び込んだ
メインイベントの大激闘を撮影して、バックステージに行くと沙弥の顔が見えた。元アイスリボンのテクラ、世羅りさと抱き合う。2人はそれぞれジュリア、すずのセコンドを務めた。すずも汗だくで沙弥の胸に飛び込んだ。そして、勝利者コメントを終えたジュリアも。
「あの時、何も言わずにいなくなってしまってごめんなさい……」
3年あまりの間、心にしまい込んでいた言葉だった。
ジュリアは沙弥のことをどう思っているのか。筆者もずっと気にかかっていた。遠回しに聞いてみたこともあったが、それだと遠回しにしか答えない。それならと「沙弥さんについて聞かせてほしい」と正面から伝えた。今年に入ってすぐのことだ。今すぐ原稿にできなくても“赤のチャンピオン”が過去をどう受け止めて前に進んできたのかは知っておきたかった。ジュリアは言った。
「沙弥さんとの最後の試合は、道場マッチでタッグを組んでの“ドリンクマッチ”でした(2019年10月9日)。音楽が鳴ったらテキーラを飲み干さなきゃいけないっていう試合で。それが本当に楽しくて。アイスリボンをやめようと思ってたのに、そこでまたメチャクチャ悩みました。やっぱり最後まで一緒にいたいなって。
悩んで悩んで、でも最後は自分の道を行くことにしました。沙弥さんとの信頼関係はその程度だったのかって言われたら、そうですと答えるしかない。でも私の気持ちは、彼女が一番分かってくれてたはずだとも思ってます」