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「ドウアンはどこまで行くんだろう」ドイツ人記者も絶賛&期待、堂安律がブンデスで実感する“成長”「かなり強くたくましい選手になれてる」
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2023/01/31 11:00
W杯後も高いパフォーマンスを見せ続ける堂安。スタジアムでは称賛する声が上がる中、本人が意識するのは…
「全然だめだ。ここまで何もできていない!」
「判断が遅すぎる!」「動きが全くない!」
フランクフルトの記者だったのか。彼からついそんな言葉が出てきてしまうほど、フランクフルトは圧倒されていた。だが、前半終了間際にフランス代表FWコロムアニが巧みな個人技から先制ゴールを挙げると、グッとガッツポーズをして、またパソコンへの指を動かしていく。いい見出しが思いついたのだろうか。地元記者が熱血的なクラブファンというケースは多い。
「非常にいい選手だ。彼は、本当に非常にいい」
そんな彼が、後半途中に思わずつぶやいていた。
「非常にいい選手だ。彼は、本当に非常にいい」
フランクフルト記者の視線の先には堂安の姿があった。相手チームの地元記者から、素直な称賛が寄せられるほど、この日の堂安のプレークオリティは相当に高かったのだ。
フランクフルトの長身CBエバン・エンディッカがまるで歯が立たないほどの切れ味を何度も見せている。身長差をものともせず、ハイボールさえもマイボールにしてしまう。奪いに来る相手の動きの逆を突きまくり、いとも簡単にはがしていく。59分のプレーは圧倒感さえあった。
スイス代表が思わず天を仰いだ堂安のプレー
正対したエンディッカの後ろにボールを運ぶと同時に、素早く身体を相手の前にくいっと入れ込み、相手の激しいチャージにバランスを崩すことなく突き進むと、続けてボールを奪いにきた相手選手も、その右横にちょんとボールを流してスムーズに入れ替わってしまう。そのままさらにドリブルで進もうとする堂安を、たまらずエンディッカがファールでストップ。納得のイエローカードが提示された。終盤に、何とか抑え込もうとしながら、切れ味鋭いターンで振り切られたスイス代表ジブリル・ソウが、思わず天を仰いだのも印象的だった。止めようがないとさえ思ったのだろうか。
複数のフランクフルト選手に囲まれる場面もあった。だが、味方がスペースへ走りこむのを見ると、瞬時にそこへふわっとしたパスを送りチャンスへ繋げてしまう。相手がつぶしたと思ったところからの打開策を見せるのだから、たまらない。
あのプレーは?「もうブンデスでは証明済み」、見据えるのは…
1対1の引き分けで終わった試合後のミックスゾーンで取材に応えてくれた堂安も手ごたえを口にする。