マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「ドラフト会議の後は、毎年5kg太りますね…」プロ野球スカウトが明かす“オフシーズンのウラ話”「ごちそう恐怖症になるんです」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2023/01/27 17:01
ソフトバンクの新入団選手たち(12月5日撮影)。笑顔で記念撮影するドラフト1位、イヒネ・イツア(手前中央)ら ※本文とは直接関係ありません
軸足(右足)にスッと体重を乗せてから、踏み出した左足に、やはりスイッと乗せ替える。両肩を結ぶ線上で両腕が操作されて、ボールを握った右手に自然に高さがとれて、そこからいかにも気持ちよさそうに右腕が振り下ろされる。
誰かに教わったことをなぞっているような「人工的」なわざとらしさがない。間違いのないフォームから、きれいなバックスピンの効いたボールが、相手のグラブに向かって、白い糸を引く。
何球投げても変わらないフォームと、変わらないバックスピンと、相手の捕りやすい範囲を外さない「再現性」の高さは、いったいなんだ!
この大会で私が見た6チーム96選手の中で、間違いなくいちばん良いキャッチボールのできる選手だ。
この大会に参加したすべての選手に、関根百花選手のこのキャッチボールを「お手本」として、いますぐ見せたい!と思った。そして、この際だから、東京にいる高校球児、学生球児にも、一緒に見せたい……いや、見せなくちゃ!と思った。
さらに、その素振り……バットスイングだ。肩口に置いたグリップが、レベルの軌道で振り抜かれて、頭が動かない代わりに、キャッチボール同様、右の股関節がスッと自然に左股関節に乗り換わって、やっぱり作られた感じがない。
5本の連続スイング。振って、戻し、振って、戻し……の躍動感あふれる連動。その振って戻すスピードと、戻して一瞬タメる「間(ま)」が、またお見事。
持って生まれた「野球上手」の資質。小学6年生の女子で153cm42kg。スラリとしたユニフォーム姿がしなやかに躍る。
実戦での走攻守が見られなかったのが心残りだったが、これだけの才能だ。どうか、このままで……と、せつに思う。今のプレースタイルをそのまま大切にして、そこにほどよく力感が加わってくれば……。
関根選手がどのような将来展望を持っているのかはわからないが、とんでもない素質を持った女子小学球児が現れたことに、私は心から驚き、心から嬉しく思っている。