マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「ドラフト会議の後は、毎年5kg太りますね…」プロ野球スカウトが明かす“オフシーズンのウラ話”「ごちそう恐怖症になるんです」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2023/01/27 17:01
ソフトバンクの新入団選手たち(12月5日撮影)。笑顔で記念撮影するドラフト1位、イヒネ・イツア(手前中央)ら ※本文とは直接関係ありません
「会食は家族や関係者もいますから、焼肉とか、しゃぶしゃぶとか、食材が偏ると、好き嫌いもありますから。やっぱり、いろいろな食材が用意できる中華料理が多くなりますね。選手の兄弟に球児がいたりすると、食べ盛りですから……それなりにボリュームもないと。中華だと、ひと通り食べて、まだもの足りないような顔してたら、最後の炒飯を多めにしてもらうとか、融通が利くじゃないですか」
指名した選手が多い年は、1週間から、場合によっては10日も仮契約とお祝いの会食が続くことがあるという。
「仮契約して、会食して、そのまま泊まって。移動して仮契約して、会食して泊まって、また移動して……太りますよね」
もう太っちゃいけない歳なんですから……と笑っている。
「もう、中華料理恐怖症というか、ごちそう恐怖症というか……。でも、選手たちの食べっぷりがいいもんだから、つられて食べてしまうんですよ。よしっ! この食いっぷりなら大丈夫だな、間違いないな!って。つい、こっちも嬉しくなって」
横で黙って話を聞いていたもう1人のスカウトの方にも訊いてみた。
オフの用事のない日は、どうしてるんですか?
「なーんもしてません。1日ブラブラ、ブラブラ……なんにもしてないですよ」
とかなんとか言いながら……と、チーフがすぐに反応してきた。
「指名して担当になった選手んとこに、プロテインとか、栄養つきそうな食べ物とか、せっせと運んだりしてるんですよ。自分のお金で買ってね。結構遠くまで。そういう人なんですよ、この人は」
惚れて通えば、千里も一里。スカウトたちに、暮れも正月も、やっぱりなさそうである。
【2】「反復練習しかありません!」
母校・早稲田大学野球部が主宰するワークショップに参加した。
知らなかったことを知ること、知っているつもりだったことを確かに知ることは、この年になっても嬉しいことだ。
帰り道の足どりは力強さからして、行きとはぜんぜん変わってくる。
そもそもOBの野球指導者たちを対象とした勉強会だが、現役部員も何人か加わって、野球のさまざまな動作解析を科学的に追求する内容で、専門家のレクチャーを学び、質疑応答が交わされた。
あるやりとりに、ハッとさせられた。
「今のお話はたいへん勉強になったのですが、野球の現場で、実際に指導する場合、選手たちがスッと身に付けられるような効果的な方法はありませんでしょうか?」
熱心な高校野球指導者からの質問だった。
すぐれた理論を、選手の技術として体現させるための方法論。現場の第一線からの、もっともな問いかけだ。
その答えに、ものすごく興味があった。
「反復ですね。反復練習しかありません!」