“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「お前ストライカーだろ!」18歳福田師王が燃えた“怒声”と“同い年のブンデスデビュー”…覚悟の高卒ドイツ直行「時代を変えたい」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJIJI PRESS
posted2023/01/25 11:01
ブンデスリーガ・ボルシアMGのユニホームを着て笑顔をみせる神村学園FW福田師王
実戦形式の練習では、得意の動き出しを何度も仕掛けるも一向にボールがこない。ボールを受けるためにポジションを落としてもパスが回ってくる気配すらない。言葉も通じない、知り合いも友達もいない環境で過ごすことは福田にとって苦しい時間だった。落ち込んでいる暇すらなく、あっという間に時間は過ぎ去っていく。結局、最後まで彼のもとに効果的なパスはこなかった。
練習後、いつも込み上げてきたのは悔しさではなく、“怒り”だった。その矛先はパスを出さないライバルではなく、自分。
「自分がヘタクソだからパスがこない。何もできない自分に腹が立ちました」
自分がヘタクソだから――そうやって自分にベクトルを向けられるのは福田の強みの1つだと言っていい。神村学園中等部時代から切磋琢磨してきたMF大迫塁(J1セレッソ大阪内定)のことは「神」と呼ぶほど信頼を置いてきたが、単にリスペクトするだけではなく「差を広げられたくない。自分が成長しないと一生塁には追いつけない」とシュート練習やゴールへのアプローチをひたすら磨いた6年間だった。だから、この“地獄”の経験もすぐに自分にベクトルを向けることができた。
「トレーニングのところからみんな勝負にめちゃくちゃこだわってやっていましたし、強引に仕掛けたり、強引にシュートまで持っていったり……。『結果を残して何が何でも上に行く』というリアルな気持ちが伝わってきました。それくらいやらないと置いていかれるなと」
おそらく1週間もパスがこない経験なんてしたことがなかったに違いない。でも、「もっと成長して、バイエルンを倒したいと思いました」と、モチベーションを上げる燃料に変えてみせた。
リセットして臨んだボルシアMGの練習参加
取り戻す機会はすぐに訪れる。そのままドイツに残り、今度はボルシアMGの練習に参加するチャンスを得た。
「もう一度自分の気持ちをリセットして、『絶対にやってやるんだ、見せつけてやる』という気持ちでしたね」
U-19チームの一員として参加し、「『ヘイ! ヘイ!』と声を何度も出して、ジェスチャーも大きめにやった」と、初日から臆することなくボールを要求した。すると、限られたチャンスでゴールを決めた福田のもとにはどんどんパスが回ってきた。仲間たちと徐々にコミュニケーションが取れるようになり、ドイツらしい激しい球際でもより考えてプレーを選択できるようになった。
「後ろ向きでボールを持ったら、自分は身体が小さいのでファール気味にアタックされて潰されてしまう。体の向きやフリーの時にどうやってボールを受けるかをすごく考えました。自分次第で環境は変わる。まだまだ自分がヘタクソだということを嫌というほど思い知らされたからこそ、成長につながる場所だと思いました」