監督には「お前以外にもいるんだからな」と言われて…

　だが、いつまでも嘆いてばかりはいられない。2カ月後にはチーム最大の目標である箱根駅伝が迫っていた。

　神戸は無我夢中だったと言うが、その努力する姿を誰もが認めていたのだろう。箱根駅伝でも9区に起用され、陸上を始めた頃からの夢をまたひとつ叶えた。

　しかし、当時のことを振り返る神戸の表情は沈んだままだ。

「監督には『お前以外にもいるんだからな』と言われていて、僕的にはヘンに全日本の結果を慰めるんじゃなくて、めちゃくちゃ追い込んでもらったのでありがたかったんですけどね。でも、やっぱり失敗してしまって……」

楽しんで走ることはこの先もないような気がします

　区間13位という結果は、雪辱を果たしたとはとても言いがたい。神戸のところでチームは順位を一つ落とし、最終順位は総合8位。からくも来季のシード権を確保したが、もちろん満足していたわけではなかった。神戸は言う。

「憧れの舞台でしたけど、選んでもらった以上は頑張らないとって気持ちが強くて、楽しむというのはなかったです。おそらく、タイプ的にも楽しんで走ることはこの先もないような気がしますね」

　責任感が強いのだろう。競技におけるマジメさは、話を聞いていても伝わってくる。駅伝で失敗を重ねながら、それでも神戸はチーム内で信頼を失うことはなかった。

　4年生になると、神戸は監督から主将に任命される。一般推薦で入った選手が主将を任されるのは珍しいことだった。（#2へ続く）

#2に続く

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