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《加藤大治郎は意外に下手だった》MotoGPライダーがモトクロスでトレーニングする理由とは?《きっかけはあのレジェンド》
posted2023/01/14 17:00
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
昨年、Moto2のチャンピオンを逃した小椋藍が、念願のタイトル獲得に向け、このオフのあいだモトクロスやダートトラックなどのトレーニングに励んでいる。ロードレースの選手たちがオフロードトレーニングを取り入れたのはここ十数年のことで、現在21歳の小椋はレースを始めたころからこうしたトレーニングを続けている。
ロードレースの選手たちがどうしてオフロードで練習をするのか。それは2005年頃からシーズン中とシーズンオフ(12月1日から1月31日までの2カ月間)にテスト禁止期間が設けられ、すべてのクラスで年間1週間程度しかテストを行えないよう厳しく制限されたことが発端である。
当初テスト日数が制限された理由は単純にコスト削減だったが、その後レース開催数が増え、エンジンの使用制限など、さまざまな規制が生じたことも影響している。選手たちにとってはサーキットでのテスト(練習機会)がどんどん減るなか、全盛時代のバレンティーノ・ロッシがトレーニングにモトクロスを取り入れたことが一気に広まり、いまやロードの選手でモトクロスをやらないライダーはほとんどいない。
小椋もこの数年はシーズンオフだけでなく、シーズン中もモトクロスやダートトラックで汗を流す機会が増えている。自然を相手に走るモトクロスでも反復練習が基本となるが、加速、減速、コーナリング、ジャンプなど、コースコンディションはどんどん変化する。天候によっても大きく変化するため、ロードコースに比べて「できないことができたときの喜びが大きい」という。
土のコースがロードにどう生きるのか
それでは、そうした練習がロードレースにどう生きるのか? という問いかけに対しては、こう答えてくれた。
「モトクロスでやったことをロードで具体的に生かそうといった意識はあまりない。バイクに乗っているとき、どう乗ったらいいのか、いいポジションはどこか、など単純に考えながら走っているだけ。モトクロスをやったからといって『良くなったぞ』という実感はないし、毎日のようにバイクに乗ることで、本当に少しずつ、なんとなく良くなっていくもの。それ以上に、やっぱり楽しいから乗っているのかな」
2ストローク時代も、そして4ストロークとなっても、最高峰クラスの戦いが熾烈なときはシーズンを通してテストが行われていた。大会が終わったサーキットでは数日間の事後テストがあたりまえだったし、1週間のインターバルがあれば次のサーキットに先乗りしてテストが行われた。チーム以外にもタイヤメーカーが行うテストもあり、シーズンオフはクリスマス直前まで、年が変わればすぐにテストが行われた。