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箱根駅伝の古豪・東農大から“入部拒否”も100km世界王者に…食品スーパー勤務、岡山春紀の逆転人生「陸上部には負けたくない、見返してやる」
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byJAAF
posted2023/01/09 11:02
昨年8月、100kmの世界王者となった岡山春紀。もともと東京農業大学で箱根駅伝を目指そうとしたが、タイムの“足切り”をされ…
川内優輝のトレーニングメソッドで壁をすんなり超える
「本当に悔しかったですね。でも、悔やんでも仕方ない。気持ちを切り替えて、東農大の陸上部には負けない、見返してやる、という気持ちになったんです。そのとき思ったのは、自分はチームにいると故障をしてしまう。ひとりで自分のペースでやってみようと決断したんです」
陸上部を去った岡山は自ら考えてトレーニングを組むようになる。参考にしたのが当時、「公務員ランナー」として大活躍していた川内優輝のトレーニングメソッドだった。練習量を思い切って減らすと、不思議なことが起こった。高校・大学時代に壁だった「5000m15分」をすんなりと切ったのだ。
「高校・大学時代は朝練習と本練習の2部練習をしていたんですけど、1部練習に変えたんです。すると全然ケガもしなくなって、体も軽く、動き始めた。自分でもビックリしましたね」
大学でフルマラソンを快走も、実業団からオファーは来ず…
市民ランナーとなった岡山は箱根駅伝を目指す同年代の選手とはまったく異質のトレーニングを行い、上を目指した。まずは次々とフルマラソンに参戦したのだ。2015年10月から11月にかけては6週レースに挑戦。つくば(2位/2時間25分00秒)、富士山(3位/2時間28分20秒)と2週連続でフルマラソンにも出場した。
「マラソンでオリンピックを目指そうと本気で考えていたんです。大学生は箱根駅伝が最大の目標になるので、先にマラソンをたくさん経験すればアドバンテージになるんじゃないかと思いました。自分が勝つにはこの方法しかない」
大学4年時にはサイパンマラソン、新潟シティマラソンを制して、地元の熊本城マラソンを2時間22分45秒の自己ベスト(当時)で優勝。ローカル大会で数々の記録を打ち立てたが、実業団チームからの勧誘は一切なかった。自ら連絡を取るも、門前払いが続いた。
コモディイイダに入社、最初の配属先は「青果部」
それでも岡山はあきらめない。食品スーパー・コモディイイダに駅伝部があることを知ると、選手としてではなく、一般社員として入社したのだ。強化選手は一般業務が大幅に免除されるが、岡山は一般部員扱い。通常業務をこなしながら、競技を続けた。