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箱根駅伝の古豪・東農大から“入部拒否”も100km世界王者に…食品スーパー勤務、岡山春紀の逆転人生「陸上部には負けたくない、見返してやる」
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byJAAF
posted2023/01/09 11:02
昨年8月、100kmの世界王者となった岡山春紀。もともと東京農業大学で箱根駅伝を目指そうとしたが、タイムの“足切り”をされ…
100km世界選手権は1周7.5kmコースを13周(+2.5km)する。「集団についていき後半勝負を考えてました」という岡山。序盤にスポーツ用のネックレスが外れ、その破片が右のシューズに入ったが、そのまま駆け抜けた。
脚を上げないようにしてギリギリを攻めて走りました
レースはフランス人選手が飛び出す展開になり、一時は1分半ほどの差がついたという。2位集団も動きがあり、40kmを過ぎて、山口純平(ELDORESO)がペースアップ。岡山は4位まで落ちたが、後半に順位を上げていく。
75km過ぎに山口をかわすと、77kmぐらいにトップに立った。しかし、残り20kmはピンチに見舞われる。両ハムストリングがつりそうになり、「脚を上げないようにしてギリギリを攻めて走りました」と岡山。苦しんだ先には“新たな世界”が広がっていた。
「めちゃくちゃ、うれしかったですよ。ゴールした後は涙が止まらなかった。大学時代もいろいろありましたけど、悔しい経験があったからこそ、世界一になれたのかなと思います。競技を続けてきて良かった。夢を追ってきて、本当に良かったと思います」
優勝賞金なし、交通費は自己負担の100kmレース
昨年5月にウルトラマラソンに初挑戦して、岡山の人生は急激に好転しはじめた。3カ月後には世界チャンピオンになり、世界中のウルトラランナーから称賛された。
「優勝を争ったフランス人選手をはじめ、オーストラリア、イタリア、南アフリカの選手などとフェイスブックで友達になったんです。世界選手権で優勝したことによって、世界がグッと広がった感じですよね。100kmは長いので、ペースもそんな速くないですし、フルマラソンのような緊張感もありません。一方で、フルマラソン以上に駆け引きがあるので、そこは楽しいです。そしてゴールの達成感はフルマラソン以上。100kmを走った爽快感は大きいですね。やっぱり、ビールも美味しいです!」