フィギュアスケートPRESSBACK NUMBER
全日本フィギュアで高橋大輔が見せた”ダンサーとしての進化”と村元哉中との”戦友みたいな関係性”「2人は成長のプロセスを愛している」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2022/12/30 11:02
全日本フィギュア選手権のアイスダンスで初優勝を遂げた村元哉中・高橋大輔組は、世界選手権への切符も手にした
「ワンフット、ちょっとエッジが甘いなって感じながら滑っていました。悪くはないけど、求められてるモノに対して十分ではないなと、体感していました。スピードが足りなくてエッジがディープに入りきれてなくて……」
その悔しさを、次のダイアゴナルステップにぶつける。高橋のアシストで急にスピードを増した2人は、リンク全体を使って雄大なステップを踏んだ。高橋自身は、NHK杯よりもレベルを上げ、レベル2を獲得した。
リフトのミスをお互いにフォローしあって…
そして迎えた最後のリフト。残る気迫で滑っていた高橋が、力を振り絞って村元を持ち上げる。しかしタイミングが早かった。
「哉中ちゃんが上がりきれていない所で、僕が早く上がりすぎてしまって。そこからもう一回持ち上げないといけませんでした。最後のエレメンツなので、体力的にも、踏ん張ったんですけど……」
村元も、高橋の頭上でポーズをとりながら、必死だった。
「『あ、揺れてるな』って。気合で行くしかないという感じでした」
リフトの間は2人で耐えたものの、降りる瞬間、前に崩れて2人で転倒してしまった。
「最後は僕のミスです。やってしまったな、と。体力がもう少しあれば力で行けたかもしれないんですが。気合いが足りませんでした」
そう自分を責める高橋。村元が続ける。
「私は動きをセーブした方が良いかと思って、降ろされる時に思い切り脚を振らなかったんです。ああいう時は振ったほうが良かったな、と勉強になりました」
村元は、降ろされる側の動きにも責任あったかのように、フォローする。そして残念そうに言った。
「最後のリフト、すごい練習してきたんですけど……。ね。(練習)したんだよね」
高橋は隣で、小さくうなずいた。
最後の力を振り絞った高橋。良かれと思って動きをセーブした村元。それぞれが「オペラ座」の完成形を目指して、もがいた。そして、自分の責任を強調した。
転倒はありながらも、フリーの得点は108.91点、総合186.61点で初優勝が決定。高橋は思わず「よかった~~。ああでも悔しい。ほんとごめん」と漏らした。