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全日本フィギュアで高橋大輔が見せた”ダンサーとしての進化”と村元哉中との”戦友みたいな関係性”「2人は成長のプロセスを愛している」 

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野口美惠

野口美惠Yoshie Noguchi

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photograph byAsami Enomoto

posted2022/12/30 11:02

全日本フィギュアで高橋大輔が見せた”ダンサーとしての進化”と村元哉中との”戦友みたいな関係性”「2人は成長のプロセスを愛している」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

全日本フィギュア選手権のアイスダンスで初優勝を遂げた村元哉中・高橋大輔組は、世界選手権への切符も手にした

「本当に0コンマ秒のことなので、体感としてはそんなに遅れてる感じじゃないんです。結構、意外にあるんです、日によって違ったりするので」

 フォローし合うやり取りに、2人の団結心が現れていた。

お互いに体感を共感できているからこそ

 むしろ技術的な進化もあった。シーズン始めには「テンポの速さが大変」と話していた2人だが、11月のNHK杯では「速さに馴染んできました」と自信を見せていた。するとこの全日本選手権では、さらに一歩進んでいた。村元は言う。

「ラテンのリズムが身体にのめり込んで入ってきているので、逆にちょっと調整が出来るようになりました。あえてゆっくり強弱をつけたり、余裕が出てきたかなと思います。どう?」

 自分の体感を共感できているのか、隣にいる高橋に確認する。

「うん。そう。すごく速いって感じることが減ってきて、むしろ今日は(自分達が)速すぎましたね。試合のときは(緊張で)いつもより速くなっちゃう傾向があって、だからテンポを落として落ち着いて、って感じでやっていかないと、と思いました」

 速いテンポで体を動かせるようになったからこそ、試合ではセーブしなければならない。ただ全力でやればピタリと曲に合ったNHK杯に比べて、明らかに技術的に成熟した部分を感じさせた。

高橋大輔のダンサーとしての進化

 2日後のフリーダンスは、高橋のダンサーとしての進化、そして2人の関係性がさらに浮き彫りになった。「オペラ座の怪人」の曲に合わせて、クリスティーヌと怪人の心の物語を紡いでいくナンバー。高橋の足の下を村元がくぐり抜け、オペラ座の地下の洞窟へと進んでいくシーンから始まる。つまり4分間のプログラムは、怪人の居城での物語。それを深く解釈していった高橋は、怪人役である自分が、演技をもっとリードしていく存在であろうと努力した。

「ワンフットステップのところで、僕が全然レベルを取れていなかったので集中して練習してきていました」

 アイスダンスでは、同じステップを踏んでも、男女別々にレベル判定が出る。高橋は、NHK杯のツイズル、ワンフットステップ、ダイアゴナルステップの3つの要素で、村元よりレベルが取れていない自分を叱咤し、成長を課していたのだ。

 本番、高橋はツイズルで最高のレベル4を獲得。そしてワンフットステップに集中した。

【次ページ】 リフトのミスをお互いにフォローしあって…

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