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『スポーツとLGBTQ+ シスジェンダー男性優位文化の周縁』カタールW杯で起きた抗議。炙り出されるスポーツの限界。
text by
松岡宗嗣Soshi Matsuoka
photograph bySports Graphic Number
posted2023/01/02 07:00
『スポーツとLGBTQ+ シスジェンダー男性優位文化の周縁』岡田桂 山口理恵子 稲葉佳奈子著 晃洋書房 2530円
サッカーW杯開催国のカタールにおける性的マイノリティへの人権侵害について、欧州各国代表が抗議を示している。日本での関心は薄く、むしろ「スポーツに人権問題や政治は持ち込むべきではない」という声も目立つ。
人権が守られなければスポーツはできない。だが、そもそもサッカーをはじめとする「スポーツ」それ自体が、実は差別を作り出し、温存してきた側面がある――こうした点をジェンダーやセクシュアリティという切り口から、研究者らが数々の資料や論文を基に紐解くのが本書『スポーツとLGBTQ+』だ。
依然「カミングアウト」している選手が少ないように、本書でスポーツ領域は同性愛・トランスジェンダー嫌悪が特に根強いことが指摘されている。そんな「近代スポーツ」が19世紀頃のイギリスで、パブリックスクールに通う上流階級の集団的な規律を培うために制度化され、アメリカで「男らしさ」の規範とともに発展してきた経緯を紹介する。