オリンピックへの道BACK NUMBER
頭を抱える高橋に、村元が手を差し伸べ…“かなだい”が演技後に見せた3年目の“揺るぎない絆”「今日は多分寝れない」「パートナーがいないと…」
posted2022/12/27 11:05
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
ときにうれしそうな、ときに困ったような、さまざまな表情を見せた。その心持ちを象徴するのは次の言葉だった。
「めちゃくちゃ喜びたかったんですけど、ちょっと失敗の方にとらわれてしまって。今日は多分寝れないですね。うれしい、けど悔しいみたいな」
高橋大輔は、演技後の取材の中で、「うれしい」と「悔しい」という相反する言葉を何度も口にした。12月24日に行われた全日本選手権アイスダンス・フリーダンスを終えて、村元哉中とともに初優勝を飾ったにもかかわらず手放しで喜べなかったのは、演技のフィニッシュの部分にあった。
上で「揺れてるな」と思っていました(村元)
最後のコレオリフトで村元を上げる。ただ、決して安定感があるリフトとはならなかった。持ち上げられていた側の村元が笑みを浮かべつつ、振り返る。
「上で『揺れてるな』と思っていました」
演技の最終盤、ここでリフトが決まればプログラムのストーリーとしても大きな盛り上がりを見せる。ただ、最終盤であることは同時に疲労が蓄積した局面であることを意味する。安定に欠けた理由を高橋自身はこう捉えていた。
「体力的なもの、技術的なもの、両方だと思います」
なんとか村元を上げたものの、おろしたあと、バランスを崩し転倒する。
演技を終えたあと、高橋は氷上にしゃがんだまま立ち上がれず、両手で頭を抱えた。「やっちゃった」と言っているかのように唇が動く。ショックの大きさがその表情にまざまざと表れ、その後も明らかに失敗を引きずっていた。得点が出て優勝が決まったあとはさすがに笑顔も出たが、それでも尾を引いていた。
フェンスにもたれかかる高橋に村元が…
一方でそのミスは、この2人の強さをあらためて浮き彫りにした。