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「曲から遅れるのは覚悟でした」全日本王者・宇野昌磨が打ち明けた驚きの計画「自信をつける、つけないという所にもう僕はいない」
posted2022/12/27 17:18
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Asami Enomoto
「自信をつける、つけない、という所にもう僕はいない。自分がより成長するためには、本番でどんな選択をするべきか、真剣に試合に向き合えば自然とついてくると思います」
全日本選手権5回目の優勝を果たした宇野昌磨(25)は、新たな境地へとたどり着いたことを、そう吐露した。今年12月には、GPファイナルで優勝し2つ目の「世界一」を手にしたばかり。連戦での本番力が光るなか、「自信がついたか」という質問に対する答えに、王者としての風格が溢れていた。
別格の「判断力」を見せたのは、ショートの朝練と6分間練習後だった。まず、朝の練習で身体が思うように動かず、いくつかの原因を考えた。
「これまで練習してきたものとは、身体が違う感触でした。氷の感触が違ったのか、コスチュームが動きにくかったのか。さまざまな理由を感じる中で、どれが原因かわかりませんでした。ならば原因の選択肢を1つ1つ潰せればと思い、(本番の)衣装はとりあえず使ったことのあるものを着てみました」
本番前の6分間練習での”気づき”
新調した黒いジャケット風の衣装で練習していたが、本番はこれまでと同様の黒シャツ風の衣装に戻した。そして本番前の6分間練習でも、状態を再確認した。
「6分間で滑ってみて『衣装のせいじゃない』と思いました」
つまり、衣装を戻したものの、動きにくさは変わらない。ならば別の原因を考えた。
「この会場に来てから、跳ぶ前に力が入っていると失敗することが多かったので、どうやったら力を抜けるか、を考えました。この氷はスピードが出ないので、そこで無理にスピードを出そうとするから失敗している。スピードが出ないなら、出さない中で跳ぼうと思いました」
6分間練習ではスピードを落とし気味にしたことで、ジャンプは決まったが、「このあと氷から上がって(2人滑走した後に)氷に乗ったら、出来ない」と感じ、本番はさらにスピードを落とし、慎重に1つ1つのジャンプを跳んだ。
「4回転フリップはもともと遅めに入るのですが、めっちゃスピードを落として。その後も絶対にスピードを出さないで行こうと思いました。スピードを出したら絶対に失敗する、と演技前に何度もイメージしておきました」
結果として、4回転フリップは美しく決まり、「4回転トウループ+2回転トウループ」とトリプルアクセルも軽やかに降りる。