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頭を抱える高橋に、村元が手を差し伸べ…“かなだい”が演技後に見せた3年目の“揺るぎない絆”「今日は多分寝れない」「パートナーがいないと…」 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAsami Enomoto

posted2022/12/27 11:05

頭を抱える高橋に、村元が手を差し伸べ…“かなだい”が演技後に見せた3年目の“揺るぎない絆”「今日は多分寝れない」「パートナーがいないと…」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

全日本選手権、フリーの演技後、クライマックスでのミスを悔み続ける高橋大輔。立ち上がれない高橋のもとに村元哉中が近寄り…

 フィニッシュのあと、氷上でいつまでもしゃがむ高橋に村元が手を差し伸べ、立つように促す。立ち上がった高橋とハグを交わし、背中をたたいて労った。

 リンクから下がると、高橋はフェンスに顔をうずめるようにもたれかかった。その背中を再び、村元がぽんぽん、と叩く。得点を待つ間には高橋の右肩に手を添えた。

 村元も悔しさはあっただろう。

「あー、もったいない」

 2人を映すモニターから村元の声が聞こえる。労りつつ、でも過度に気遣いをすることなく、悔しいという率直な思いを村元も隠さない。それができるのは、お互いに信頼があればこそ。そうでなければ、一歩間違えると相手を責めているようにも捉えられる言葉となるため、気を遣って口にできないだろう。演技後の2人のやりとりは揺るがない絆を築いてきたことを伝えるようだった。

ペア結成時にお互いが抱いていた“リスペクト”

 全日本選手権優勝という1つの成果を打ち立てた2人のつくる光景を目にしながら、ペア結成時の頃をあらためて思い起こす。

 村元は2018年の夏、それまで一緒に活動していたクリス・リードとの関係を解消した。相手がいない状態はカップル競技では競技人生そのものに直結する。その中で思い描いたのが高橋だった。

「アイスダンスに興味があるということを聞いていて、直接聞いてみようと思い、連絡をとりました」

 根底には高橋への尊敬があった。

【次ページ】 高橋の後悔も、自分たちの実力への確信があったからこそ

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