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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
KAIRIvs岩谷麻優、IWGP女子王座戦はエモーショナルな激闘に…KAIRIに聞く“インセイン・エルボーに込めたもの”「気持ちをぶつけ合いたかった」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byMasashi Hara
posted2022/12/23 17:01
岩谷麻優とのIWGP女子王座戦に勝利し、初代チャンピオンに輝いたKAIRI
「試合前から涙」2人の歴史に送られた拍手
「麻優さんの5年半、私の5年半、別々の道を進んで、それが交わってどんな化学変化になるのか。絶対に負けられない闘いです」
観客からの拍手は、そんな2人の歴史に送られたものだったのではないか。ましてこの試合、“3人娘”時代には考えられなかったシチュエーションでもあった。
「以前は後楽園ホールでの大会も2カ月に1回とかでしたから。私も麻優さんも、試合前から涙を流してました。自然にそうなってましたね」
KAIRIはそう振り返る。リング上で向き合った時には「昔に戻ったような気がしました」。だが5年半という時間が経った分だけ、2人とも成長していた。KAIRIにはアメリカでの経験もある。
「会場の有明アリーナは1万人から1万5000人くらいの大きさ(収容人数)ですよね。それってWWEの毎週のテレビ中継がある会場と同じくらいなんです。私にとっては“日常”のサイズで、だからこれまでと同じ心構え、気持ちのもっていき方で試合ができました」
WWEで学んだ「Money is here」
新日本プロレスとの合同興行も、特別なことではなかったのかもしれない。WWEでも男子選手と同じショーで試合をしてきたのだ。その中で大事にしてきたのは個々の試合、選手、使う技にリスペクトを持つことだという。体の大きな選手と同じ技を使っても目立たないし埋もれてしまう。他の選手がやることを邪魔してしまうことにもなる。小柄な自分だからこそ見せられる試合を心がけた。それは岩谷戦も同じだった。
「体の大きさやパワーを活かして闘う選手が多い中で、自分は感情表現やスピードを意識してきました。アメリカではボスのトリプルHさんやポール・ヘイマンさんに(顔を指して)ここで試合をしなさいって教わりました。“Money is here”って言うんです」
ここにお金がある=表情、感情表現がお金を払うファンの支持につながるというわけだ。
「WWEではプロモ(マイクアピールなど)のレッスンもあるんですけど、うまくいくと“今のはMoneyだった”みたいな褒め方をされましたね。お金が取れるパフォーマンスだって」
KAIRI「気持ちをぶつけ合いたかった」
岩谷との対戦は、ことさらに意識しなくてもエモーショナルなものになった。同時に、時間が経つのが早いとも感じた。これは筆者も見ていて感じたことだ。
「なんででしょうね。自分がスターダムの他の選手より“間”を多くとって試合をするからというのはあると思います。あとは集中してたからでしょうね。一つ一つの技を探るように、技を選びながら試合をしました。大技を詰め込むような試合じゃなく、気持ちをぶつけ合いたかった」