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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
KAIRIvs岩谷麻優、IWGP女子王座戦はエモーショナルな激闘に…KAIRIに聞く“インセイン・エルボーに込めたもの”「気持ちをぶつけ合いたかった」
posted2022/12/23 17:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Masashi Hara
他の誰にも真似できないキャリアだ。
KAIRIはスターダム所属時代、宝城カイリとして2大シングル王座を獲得。アメリカに渡るとトーナメント「メイ・ヤング・クラシック」を制し、WWEで女子タッグ王者に。系列団体NXTではシングルベルトを巻いた。
帰国すると、今年から古巣スターダムに参戦。11月20日、スターダムと新日本プロレスの合同興行ではメインイベントで岩谷麻優に勝ち、新設されたIWGP女子王座の初代チャンピオンになっている。スターダム、WWE、NXT、IWGP戴冠はもちろん史上初だ。本人にとっても予想外のことだった。
「偶然というか幸運というか……自分でもこうなるとは思ってなかったです」
IWGP女子王座設立に関しては否定的な声もあった。スターダムの会見で発表されたこともあり、ベルトの意味や価値について疑問視されたのだ。スターダムにはすでに(KAIRIも過去に巻いた)ワールド・オブ・スターダム、ワンダー・オブ・スターダムという2大王座がある。
ただメンバーが発表され、王座決定トーナメントが進むと“納得感”が増していったように見える。決勝のカードはKAIRIvs.岩谷麻優。これを見たくないというファンはいない。会場の有明アリーナには新日本プロレスのファンも多かったはずだが、メイン開始のアナウンスとともに大きな拍手が起きた。「待ってました」、「この試合を見にきたんだ」という拍手だ。
KAIRIと岩谷、それぞれの5年半
岩谷はスターダムの1期生であり“アイコン”と呼ばれる選手。スターダムの頂点、“赤いベルト”ことワールド王座を手放してから2年になるが、ここでIWGPという別の頂点に立つことには大きな意味があった。
KAIRIもまた、IWGP女子の初代チャンピオンにふさわしい選手と言える。スターダムのトップからアメリカでの大活躍。常に女子の最先端を走り続けてきた。古巣に再登場してから見せている存在感も、やはり独自のものだ。
そして岩谷とKAIRIは、かつて紫雷イオ(現・WWEのイヨ・スカイ)とともにスターダムの“3人娘”と呼ばれていた。絶対的な中心がこの3人だったのだ。だがKAIRIとイオはアメリカへ。それからは岩谷が団体を支え、今のスターダムの隆盛につながった。トップは替わっても、アイコンは変わらない。
かつてともにスターダムを盛り上げ、一度は別の道を選んだ岩谷とKAIRI。それぞれが意味のあるキャリアを積み、そして5年半ぶりにシングルで対戦するのが大会場でのIWGP戦。タイトルマッチが決まると、岩谷は「KAIRIがいなくなって、この5年間どんな気持ちでリングに立ち続けたか分かる?」と問いかけた。しかしKAIRIにはKAIRIの5年半があった。