「自分の事務所のライブにだけ出ている芸人って売れないんですよ。一方、挫けずに外のライブに出て、スベりながらもネタを調整していける芸人は結果を残していく。錦鯉はその典型でしたね。結果、親と子ぐらい年齢が離れた後輩からも『面白いオッサンだな～』と認められてましたから」

　また新ネタは月に1本も作れば十分という風潮の中、月に5本作ることを公言。高いモチベーションを維持できた理由を、平井は事務所の先輩の影響が大きかったと見る。バイきんぐは隔月で新ネタ6本をおろすライブを始めてから頭角を現し、瞬く間にキングオブコントを制覇した。ザコシショウやアキラ100％は、R-1優勝を機に40歳を過ぎてから売れた。成功体験を間近で見てきたから、それを目標に踏み堪えられたというのだ。

「いつか倒れるんじゃないか」

　スタイルが固まった錦鯉は、15年から復活したM-1では準々決勝へ、その翌年は準決勝へと駒を進める。しかしその後の2年は準々決勝で足踏みした。前出の原澤がアパートに引っ越したのは、その一進一退していた時期だ。

「同じアパートに芸人4人が住んでいたので、僕の部屋でよく鍋をしてました。長谷川さんがお金がなくて1日に1食食べられたらいいと言ってたので、誘うと『いいの？』と飛んできましたね。お金を置いていくことはなかったです。『ありがとう！』とキレイな笑顔だけいただきました」

　アパートの住民である後輩芸人のまんがごはん・古澤は一緒に鍋をつつきながら、長谷川の生活を憂慮していた。

「アルバイトの後そのままライブに出て、駅から20分歩いて帰ってくる。そういう若手芸人がやるようなことを40代がやってたので、いつか倒れるんじゃないかと心配してました。歩く姿を後から見てると、介助が必要なほどくたびれてましたし……。ステージ上では『こーんにちはー！』なんて元気に叫んでますけど、楽屋との落差がすごかったです」

＜続く＞

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