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4年前、元・相方の死…なぜ錦鯉は中年でも輝けたのか? 先輩芸人の証言「チャラチャラ遊んでた芸人が50歳で、いきなり売れるわけない」
posted2022/12/05 17:02
text by
鈴木工Takumi Suzuki
photograph by
Wataru Sato
元相方の死
18年、もう一歩先になかなか進めない錦鯉に奮起を促す出来事があった。マッサジル時代の長谷川雅紀の相方が死去したのだ。渡辺隆は「絶対に雅紀さんを売れさせないといけない」「M-1で優勝してやる意識を強く持つようになった」と決意。一緒に納骨に向かったSMAの平井精一は、その夜、今後錦鯉のネタをどうしていくか、膝を突き合わせて渡辺と話しあったという。
ハリウッドザコシショウも渡辺の変化を感じていた。
「もともと渡辺は人を光らせる才能があって、僕の単独ライブの作家として、いいところをどんどん引き出してくれた。正直、僕の作家をずっとやってほしかったぐらい。それなのに、その才能を自分らのコンビでは活かしきれてなかったんですよ。でもその頃から長谷川の光らせ方に渡辺が気づき始めましたね。雅紀はずっと変わってないと思います。ただのバカですから。雅紀だけじゃ売れないし、渡辺だけでも売れない。そこはやっぱりコンビ揃ってこその錦鯉。あいつらが出会わなかったら売れてないですよ」
「おじさんたちが高め合っている」
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錦鯉の面白さを千鳥や博多大吉といったMCクラスの芸人が言及するようになり、認知度は徐々に拡大。そして20年、「50歳まで泥水をすすってきた人間を応援したくなる」(平井)という世間の好意を追い風に、いよいよM-1決勝にまでたどりついた。
結果は4位で終わったが、翌年にはテレビの仕事が急増。一方、それまで主戦場としていたライブの出演本数は、年間30本程度に激減した。賞レースで戦う芸人にとって、ライブに数多く出ることで、ネタを叩いて強くする作業は欠かせないものだ。