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大阪桐蔭“まさかのドラフト指名漏れ”余波「育成する時間がなくなった?」西谷監督が記者だけに漏らした“本音”とは《超強豪にいま何が?》
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byJIJI PRESS
posted2022/12/11 11:01
今秋のドラフト会議。大阪桐蔭OB・現役選手として松尾汐恩がDeNAから1位指名を受けるも、他の候補は指名漏れが相次いだ
神宮大会の優勝後の会見で、筆者は意地悪な質問を投げかけてみた。チームに「勝つための戦い」が染み付いているのではないか。そして、勝ち続けることで育成する時間がなくなったのではないかと。以下、西谷監督の弁だ。
「個を鍛える時期とチームを鍛える時期は違うと思っていますけども、チームとしてどのように戦っていくのかという風土は少しずつ付いてきているかなとは思います。もう少し個を大きくしていかないと大きな成功はできないと思います。選手が揃わないとか、個が育っていない状況でも野球は勝っていかないといけない。昔、(ライバルの)PL学園が今年はそこまで強くないと思ったチームでも勝てなかった。そういう部分は少しずつ伝統として育まれているのかもしれないです。神宮大会に出る事も勉強ですので、その分、帰ってからはしっかりやりたい。(だから)早く帰りたい(笑)」
大会がある以上、勝つための選択をするのは当たり前だ。明治神宮大会でも、準決勝の仙台育英戦では、球数の多かったエースの前田に161球完投を強いている。今の大阪桐蔭にとって「勝ち続ける」選択が過去以上に染み付いているのは紛れもない事実だろう。
「1年間が13カ月になればいいんですけどね」
「勝つこと」と「選手を育てること」を両立させる難しさ。大阪桐蔭が近年見せる無類の強さの裏で、多くのドラフト指名漏れが生まれた事実は、甲子園や高校野球のあり方に課題を突きつけているように思えてならない。
「(上述の質問を受けて)神宮大会に出場せずに、練習しろって?(笑)」
冗談混じりにそう話した西谷監督は、会見後、筆者のもとにやって来てこうも言った。
「1年間が13カ月になればいいんですけどねって、答えようかと思いました」
育成には時間が必要。
いつもより饒舌な西谷監督が口にした言葉はどれも冗談には聞こえなかった。
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