濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「立ってるだけで映える」173cmの“闘うグラドル女優”後藤智香がリングで見せる“華”と野心「四方から見てもらえるのがとにかく嬉しい」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/12/01 11:01
アクトレスガールズに所属する“闘うグラドル女優”後藤智香。長身を生かしたジャイアントスイングも繰り出す
坂口代表には「ブーツ(顔面への前蹴り)だけできれば大丈夫」とも言われていた。しかしリングで「映える」だけでは限界があると本人は感じた。タッグマッチで西口プロレスのアントニオ小猪木と対戦、コミカルな展開を繰り広げたが、そこにも複雑な思いがあった。
「コミカルな試合をやるのは、自分の個性にも合っているとは思うんです。性格が明るいし、天然というかいじられキャラっていうんですかね。でも本当は、実力のある人がコミカルなことをやるから面白いんだと思います。私はそうなっていないんですよね。そんなに技が使えないから、技を使わないで楽しんでもらうという役割で。
表現力もまだまだだし、キャラを作ってる余裕もない。だからリング上では本当に“素”です。思い切り技を出してもらって、それを真っ向から受けて、痛さとか悔しさとかを素直に出すしかない」
「プロレスは奥が深いです」
いま使っている技はブーツにボディスラム、ストンピングにジャイアントスイングといったところ。ジャイアントスイングもまだ未完成だという。
「アクトレスリング」はアクトレスガールズが今年から始めた公演の形式。プロレスの技と試合フォーマットを使い、しかしプロレスとは違うエンターテインメントだと謳った。とはいえ演者たちはプロレスの練習をしてプロレスの技をかけ合う。当然のように痛いし苦しい。実際のところプロレスにしか見えないし、プロレスとは違う「エンタメ」要素を運営は打ち出せていない。リングでマイクを握った後藤は思わず言った。
「プロレスは奥が深いです」
それが偽らざる心境だったのだろう。新しいエンタメより何より、プロレスがしっかりできなければと。
10月の後楽園ホールでの「公演」(大会ではなくこう呼ばれる)では、メイン後にエースの青野未来がチャンピオンベルト(シングル王座)を作ってほしいとアピールした。トーナメント参戦の名乗りを挙げたのは松井珠紗、入江彩乃、皇希。
「アクトレスガールズがプロレス雑誌で見ているような世界になってきたなって思いました」
後藤は言う。アクトレスガールズは昨年いっぱいでプロレス団体としての活動をやめるとアナウンスし、そのことでたくさんの選手が退団している。だが最近では「プロレスラーではない人間がやるプロレス」という言葉も使われている。そのあたりは団体の中でも認識が統一されていないようだ。後藤の自己認識も、プロレス団体に所属するプロレスラーではなかった。
「アクトレスガールズがガチガチのプロレス団体だったら入門していなかったと思います」
けれど先輩たちはチャンピオンベルトがほしいと言う。プロレスラーならそれが普通のことかもしれない。では自分は何なのだろう。考えると、やっぱり「プロレスの実力をつけたい」と思うのだった。
「先輩たちがベルト争いに手を挙げる中に私も入りたかったんです。でも自分の力からすると、どうしても尻込みしてしまって。トーナメントが正式に決まるんだったら、その時は“自分も出たいです”と言いたいですね。それまでに少しでも力をつけないと」