F1ピットストップBACK NUMBER
「君がいたから、僕たちも燃えた」アロンソとハミルトン、2人の王者に惜しまれつつ、4年連続王者ベッテルがついに引退
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Image
posted2022/11/25 11:01
今季最終戦アブダビGPのセレモニーで、全ドライバーから祝福を受けるベッテル
「たとえ結果が彼に有利なものだったとしても、それが人生の中で最高の瞬間だったことに変わりはない。僕の中でセバスチャンの存在は永遠だ」
現役最年長41歳のアロンソはベッテルとのライバル関係を振り返りつつ、「これがベッテルとの最後のレース」という気持ちでアブダビGPの週末に臨んでいた。だから、アロンソは「友の邪魔はしたくない」と、予選でアタックしているベッテルが近づくと、自分の状況よりもベッテルを優先して即座に道を空けた。さらにレースでも1つ前のポジションからスタートしたベッテルの後方に控え続けた。去り行く友人との時を、1秒でも長く過ごしたいかのように……。
しかし、アロンソは28周目にマシントラブルによってリタイアを余儀なくされ、ベッテルとのランデブーを最後まで続けることはできなかった。
幻のドーナツターン揃い踏み
その後、ハミルトンもマシントラブルに見舞われてストップ。ベッテルの引退レースを最後まで走り切ることができなかった。ベッテルはゴール後、レースの上位3人のドライバーたちに続いてホームストレートでドーナツターンを披露したが、ある情報筋によると、ハミルトンとアロンソも完走していれば、ベッテルとともにドーナツターンを行う予定だったという。
静かにステアリングを置いたベッテルは、15年間の現役生活をこう振り返った。
「ただただ、ありがとうという言葉しかない」
ハミルトンとアロンソも同じ思いだっただろう。
「ありがとう、ベッテル。君がいたからこそ、僕たちも燃えた」