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「君がいたから、僕たちも燃えた」アロンソとハミルトン、2人の王者に惜しまれつつ、4年連続王者ベッテルがついに引退 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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posted2022/11/25 11:01

「君がいたから、僕たちも燃えた」アロンソとハミルトン、2人の王者に惜しまれつつ、4年連続王者ベッテルがついに引退<Number Web> photograph by Getty Image

今季最終戦アブダビGPのセレモニーで、全ドライバーから祝福を受けるベッテル

「あのときは本当に悪かったよ。バクー(市街地コース)で僕がやったことはプロのドライバーとして決して褒められたものじゃなかった。でも、あのおかげで君との友情が……」

 その友情は、ワールドチャンピオンになった者同士でなければ築けない、特別な関係なのかもしれない。だからこそ、アブダビGPが友人との最後のレースとなることに寂しさを滲ませていた。

「僕らはいつも素晴らしいバトルを繰り広げてきたからね。でも、ほかにも復帰したドライバーがいるし、隣にいる彼(アロンソ)もそうだったから、セブも戻ってくるんじゃないかな。もちろん、このレースが彼にとって最後だということは受け入れているけど……」

常にアロンソに立ちはだかったベッテル

 アロンソもまたベッテルと名勝負を演じてきた。ベッテルが初めてタイトルを手にした2010年に、最終戦まで首位に立っていたのはアロンソだった。2012年も終盤戦までタイトル争いを繰り広げた末に、ベッテルが3ポイント差でアロンソを下して3連覇した。

 ベッテルはアロンソが頂点を掴もうとすると、常に最後に立ちはだかってきた好敵手だった。それでも、その思い出はいまとなっては忘れることができない大切な時間となっている。

「僕らは多くのレースを共にしてきた。15年間にわたって、何度かチャンピオン争いをした。そんな存在は決して多くない。僕のキャリアの重要な局面には常にセバスチャンがいた。共に偉大なものを懸けて戦ったライバルとしてね」

 優勝を自力で目指すポジションに恵まれなかったこの2年間も、2人はしのぎを削った。その象徴といえるレースが今年の日本GPだった。
 ベッテルはスタート直後にアロンソに接触し、最後尾まで後退。だが、ここから驚異的な追い上げを見せ、最終ラップの最終コーナーではアロンソとサイド・バイ・サイドとなって横並びでチェッカーフラッグを受けた。結果的に1000分の11秒差でベッテルがアロンソを抑えて6位でフィニッシュするという、伝説となるであろう走りを披露した。

【次ページ】 幻のドーナツターン揃い踏み

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