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「天使と悪魔が戦ってて…」世界女王・坂本花織22歳が五輪メダル後のシーズンで抱える葛藤「今季あらゆる場面で、悪魔が言うんです」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2022/11/24 11:00
NHK杯で銀メダルを獲得し、GPファイナル進出を決めた坂本花織
迎えたNHK杯のフリー。冒頭の4回転を『跳ばなくちゃ』と考えると、力んでしまい転倒した。しかしそこからの立て直しに、成長が現れていた。3回転+3回転など得点源のジャンプを次々と決めると、フリー125.11点、総合193.12点での3位。GP2戦連続での表彰台をつかみとった。
「今季、すべての試合で4回転を入れてきたことで、どんな転び方をしてもすぐに次を立て直すという経験を積んできた成果だと思います。どんなに調子が悪くても、試合で入れるという経験をしないと進まない。今は『次で立て直さなくちゃ』ではなくて『立て直せて当たり前』と思えています」
4回転トウループは次戦に持ち越し。しかし手応えもあった。
「今日は『跳んで見せるぞ』という楽しむ気持ちが無くなり、『跳ばなくちゃ』と考えて自分でプレッシャーをかけていました。練習の中で『この1回で決めるぞ』という練習を、もっともっと積むことが必要かなと思います」
まだ19歳。4回転ジャンバーへの道を、また一歩進んだ。
時の人、渡辺倫果はトリプルアクセルを武器に
渡辺もまた違うシンデレラストーリーを切り開いていた。もともとはGPのエントリーが無かった状況から、9月のロンバルディア杯で優勝し、その後、怪我で出場辞退した樋口新葉の代わりにGP2戦にエントリーされた。そのスケートカナダでトリプルアクセルを降りて優勝、時の人となったのだ。
会場入りしてからも調子は好調。トリプルアクセルを武器に、挑戦者として挑む予定だった。
「前日までは『私がGP2戦目を迎えるなんて、おもろいな~』なんて考えていました。でもショートの朝、急に、『ファイナルがかかってる』と思い始め、そこがプレッシャーの始まりでした」
迎えたショート。勢いよくトリプルアクセルを踏み切ったものの転倒し、3回転ループも1回転に。58.36点でまさかの9位発進となった。
「トリプルアクセルのミスは許容範囲としても、ほかのジャンプは安定させないといけません。スケートカナダで1位になったことと、ファイナルがかかってることで、緊張しました。でも元々は“0戦から”の人。フリーは考えすぎずにやります」