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馬大好きの牧場オーナーなのに「馬アレルギーなんです…」“Yogibo&引退馬”牧場の“産みの親”岩崎美由紀さんが明かす「はじまりの1頭」 

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伊藤秀倫

伊藤秀倫Hidenori Ito

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2022/12/25 17:03

馬大好きの牧場オーナーなのに「馬アレルギーなんです…」“Yogibo&引退馬”牧場の“産みの親”岩崎美由紀さんが明かす「はじまりの1頭」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

YogiboとアドマイヤジャパンのCM動画で話題になったヴェルサイユリゾートファーム。息子と一緒に引退馬牧場を立ち上げた岩崎美由紀さんにその経緯を聞くと…

「馬に近寄らないでください」

 そこまでして美由紀さんが「お産婆役」を買って出る理由を尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「私ね、馬アレルギーなんです」

――えーっ!? そんなことあるんですか?

「私もびっくりしました(笑)。こんなに馬が好きなのに。ここを始めて2年目ぐらいのときに、どうも息苦しいな、という状態が1年間ぐらい続いたんですね。それで密かに肺がんを疑って病院で診ていただいたら、肺がんでも肺炎でもないけど、肺活量が異常なぐらい低いと言われまして。だったら何かのアレルギーかも、と。実際に北海道に来てから白樺とかヒノキのアレルギーが出たので、検査していただいたら、なんと馬アレルギーで、しかもレベル4でかなり高かったんですね」

――よりによって、牧場をやっているのに。

「そうなんですよ。どうすればいいでしょう、ってお医者様に訊いたら『馬に近寄らないでください』と言われてしまって。実際に寝ワラの交換とかブラッシングとかで馬に触れるとブツブツが出てきて、血管が浮かび上がってきちゃうんですね。だから普段は現場の仕事ができないので、お産のときぐらいは頑張ろうかな、と。毎日薬を飲んでるんですけど、何も馬アレルギーにしなくてもいいのに、とは思っちゃいます」

 だがときに人に騙され、馬アレルギーになっても、自らの貯金を投じてまで牧場を立て直し、馬の幸福を考え続ける美由紀さんのもとには、自然と人が集まってくる。

「私は、わかってくれる人だけついてきてくれたらいいと思っているんですね。もといた方は全員去ってしまいましたが、今いるスタッフたちはみんなそれぞれに得意分野があるスペシャリストで、何より馬を本当に愛している人ばかり。本当にいつも助けられています」

 そんな中で美由紀さんが心がけていることがある。

「やっぱり人間同士が一番大変なんです(笑)。こういう世界なんで、みんな自分に自信のある人ばかりだから、ときにスタッフ同士がぶつかることもあるんです。彼らに比べると私は素人ですが、素人なりに何年かやってきてわかってきたことは、生き物相手の仕事に『絶対にこれが正解』ということはないと思うんですね。それぞれの馬によって『正解』は違って当然なので、この世界では何かを決めつけるべきじゃなくて、常に柔軟に判断していくことが大事じゃないかな、と」

【次ページ】 「ギブアップって自分でするものでしょ?」

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