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馬大好きの牧場オーナーなのに「馬アレルギーなんです…」“Yogibo&引退馬”牧場の“産みの親”岩崎美由紀さんが明かす「はじまりの1頭」 

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伊藤秀倫

伊藤秀倫Hidenori Ito

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2022/12/25 17:03

馬大好きの牧場オーナーなのに「馬アレルギーなんです…」“Yogibo&引退馬”牧場の“産みの親”岩崎美由紀さんが明かす「はじまりの1頭」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

YogiboとアドマイヤジャパンのCM動画で話題になったヴェルサイユリゾートファーム。息子と一緒に引退馬牧場を立ち上げた岩崎美由紀さんにその経緯を聞くと…

息子・崇文さんとの「衝突」

 そこで美由紀さんが新たに立ち上げたのが化粧品事業である。サラブレッドの胎盤から抽出したプラセンタを配合した化粧品をメーカーと共同で開発し、本格的に販売に乗り出している。

「職業柄もあって、私自身、これまで色んな化粧品を使ってきましたが、なかなか納得するものがなくて、だったら自分で作ってみよう、と。馬由来のプラセンタを使って、メーカーさんにお願いして、だいたい三カ月ごとに試作品を何度も作ってもらって、自分でも試して、試行錯誤を重ねて2年かかって開発しました。最初は大々的に販売するつもりはなくて、お世話になった方や知人にお譲りしていたんですけど、おかげさまで評判がよくて『これ、商品にしたほうがいいよ』と言われたので、その気になったという経緯ですね。出産のときの胎盤を使った化粧品の収益で引退馬の牧場づくりの足しになれば、まさに『ゆりかごから墓場まで』の理念とも合いますから」

 共同で商品開発したメーカーは、息子の崇文さんが見つけてきたという。

「息子はそのへん、フットワークが軽くて早いんです。私はなかなか動けないタイプなので、息子に『こんな会社があったよ。行ってみたら』と言われて、『ああ、そう。行ってみるわ』とようやく重い腰をあげて、という感じです(笑)」

 ところで牧場の経営をめぐって親子で衝突することはないのだろうか。

「もう、しょっちゅうです(笑)。例えばやっぱり生産って大変なんですね。最初の年はお産もものすごく順調で、『なんだ、余裕じゃない』と思っていたら、去年なんかは7頭産まれるはずが2頭亡くなったり、なかなか思い通りにはいかない。だから息子からは、自前の生産頭数を少なくして、預託(預託料を受け取って馬主から馬を預かって育てること)の頭数を増やした方がいい、と言われるんです。理屈としてはよくわかるし、経営だけを考えるなら私もその通りだと思うんですけど……でも、それだと夢がないでしょう(笑)? 預託で預かった子がいくら活躍しても、結局、馬主さんの馬ですから。単に生活とか経営のためだったら、私がここまでやっている意味がないというか」

――夢がなければ、牧場経営は辛すぎるということでしょうか?

「そうなんです。そうなんですよ! 出産のシーズンも、私がずっと“お産婆”をしているんです。スタッフのみんなが昼間働けるように、夕方から朝の5時までは私が厩舎のモニターをパソコンの画面でチェックして、十何頭分見てるんです。『明日にも産まれるかも』となってからすぐに産まれてくれればいいんですけど、なかなか産まれないまま5日ぐらい経つと、私もフラフラで死にそうな感じで(笑)。いても立ってもいられずに厩舎まで見に行くと、いかにもすぐ産まれそうなんですよ。それで慌てて寝ているスタッフに『もうすぐ産まれそう!』って連絡して、『まだですよ! 「産まれる、産まれる詐欺」しないでください!』って叱られるんです(苦笑)」

【次ページ】 「馬に近寄らないでください」

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