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夫の“遺言”で牧場を継いだら、なんと3億円の借金が!「馬を知らない女に何ができる」と陰口を叩かれた元タカラジェンヌの“華麗なる逆襲劇”
text by
伊藤秀倫Hidenori Ito
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/12/25 17:01
宝塚の花組トップ娘役にも抜擢された岩崎美由紀さん。競走馬の生産を行う牧場のオーナーになった経緯を本人に聞いた
「末期のすい臓がんで、病院の先生からは余命2、3カ月と言われました。それでも私は生きてくれるとしか思っていなかったので、免疫療法はもちろん、あらゆる効くと言われたものは何でも試すつもりであちこちに連れて行って、夫は余命宣告を大きく越えて、それから2年も生きてくれました」
その最期のとき、義勝さんはモルヒネで意識が朦朧とする中、美由紀さんにこう伝えた。
「できれば……美由紀にあの牧場を継いでほしい」
美由紀さんは迷いなく「牧場のことは何もわからないけど、やってみたい」と答えていた。
判明した3億円の借金
こうして2015年に夫が亡くなった後、美由紀さんは右も左もわからぬまま三城牧場の新たなオーナーとなった。ただ、そのスタートは前途多難なものだった。
「いざ相続するとなって、調べてみると莫大な借金があることがわかったんです。夫からも『借金がある』とは聞いていたのですが、その金額が予想以上だったので、正直どうしようと思いましたね(笑)。でも何とかなる、馬のために何とかするしかないって腹を括りました」
借金の総額は約3億円に達していた。なぜそこまで膨れ上がっていたのか。
「今にして思えば、夫はあまり馬を売りたがらなかったんです。『これは』という馬は売らずに手元においておきたかったんじゃないでしょうか。でも、こういう小規模な牧場では、やはり馬を売った収入というのが一番大きいので、それがあまり入ってこないとなると、経営的には苦しかったと思います」
「オレたちの給料、払えるんですか?」
このままでは1年牧場が持つかどうか怪しい状態にあった。そこで美由紀さんは牧場の苦境を牧場スタッフのトップである場長にだけは伝え、「必死に続けていけば何とかなる。だからサポートしてください」と頼んだ。他のスタッフにまで動揺が広がることを避けたかったのである。ところが――。