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2年前に戦力外…ソフトバンク藤井皓哉はなぜ“大出世”できた? 優勝かけた試合で泣き崩れるも…藤本監督に「リベンジ」を直訴していた
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2022/11/21 11:01
2年前のカープ戦力外を経て、昨年12月にソフトバンクと育成契約を結んだ藤井皓哉
14年ドラフト4位…カープはなぜ手放した?
広島にはおかやま山陽高校から2014年のドラフト4位で入団した。3年目に一軍デビューし、4年目にはプロ初勝利を飾ったが、一軍定着はならず広島時代の白星はその1つのみ。在籍6年間で一軍登板は通算14試合、防御率7.94だった。しかし、広島から戦力外通告を受ける前年にはウエスタン・リーグで26試合に登板して防御率0.33という驚異的な成績も残していた。実力は間違いなくある。しかし、一軍に上がると別人のような姿を見せてしまうのだった。
答え探しをする中で「藤井は精神的に弱いんだよ」という声をいくつも拾うことが出来た。
だが、ソフトバンクにやってきた藤井から、“メンタルの弱さ”を感じ取ることは難しかった。好投に好投を重ね、シーズンが進むにつれて彼の役割は重要性を増していった。特に7月上旬に又吉克樹が骨折離脱して以降は絶対的セットアッパーとして欠かせない存在となった。終盤戦の激しい優勝争いでは、緊迫した局面になればなるほど藤井の存在が頼りになった。9月は月間12試合に登板して防御率0.00。藤井はやはりクールに、毎回最高の仕事をやってのけたのだった。
「あまり数字は気にしていないけど、ゼロに抑えようとマウンドに上がっている結果」(9月6日、楽天戦で3者連続三振)
「与えられた場所で、与えられた仕事をするだけなので、そこは明日以降も変わることなく、チームの力になれるように頑張ります」(同12日、西武戦で1回無失点)
「自分が出来ることをこれからも続けていくだけです。明日からも自分の投球ができるように頑張ります」(同19日、オリックス戦で3者連続三振)
この一年だけを見れば順風満帆。だから「あの日」も背番号48がマウンドに上がる姿を見た時、彼はいつものようにクールに抑え、チームに最高の笑顔をもたらすのだろうと信じて疑わなかった。