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「このまま4位でいいの?」初のGP優勝、三原舞依を奮い立たせた言葉「今日の金メダルは、今まででいちばんうれしい」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2022/11/15 17:02
11月13日、グランプリシリーズのイギリス大会で優勝した三原舞依。シニアGPシリーズ挑戦6年目にして初のGPシリーズ制覇となった
(暫定トップの)レヴィトちゃんの得点も聞こえていました
出番が近づくと、緊張は輪をかけて大きくなった。三原の直前の滑走者は昨シーズンの世界ジュニア選手権金メダルのイザボー・レヴィト(アメリカ)。シニアデビューしてグランプリ2試合目のレヴィトはショート2位に続きこの日も好演技を披露、自己ベストを大きく更新する143.68点、合計でも自己ベストを更新し215.74点でトップに立った。その得点を考えればミスは許されなかった。レヴィトに対する場内の歓声も否応なく三原を襲った。
「緊張感は半端なくて。レヴィトちゃんの得点も聞こえていました」
それでも跳ね返すことができた要因を、三原は語る。
「『このまま4位でいいの?』と言い聞かせながら、奮い立たせてました」
三原に強く刻まれた「4位」という記憶
グランプリシリーズはこれまでに9度出場し、表彰台に上がった2度を除けばすべて4位の成績を残している。ショート1位でフリーを迎えていても、表彰台に上がった記憶より「4位」という数字が自身に強く刻まれていた。
「4位」、それは昨シーズンの全日本選手権での順位でもある。北京五輪代表をかけた試合で、ミスが出たことで4位となり、結果、もう少しのところで北京の舞台に立つことはかなわなかった。
平昌五輪の代表もあと少しのところで手にすることができず、4年間を懸けてきた目標だった。試合のあと、会場のさいたまスーパーアリーナから宿泊していたホテルまで歩く道中では涙が止まらなかったという。失意の大きさもうかがい知れるし、多くの五輪競技を取材してきた経験からすれば、再起まで長い期間を要しても不思議ではない状況だった。