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「このまま4位でいいの?」初のGP優勝、三原舞依を奮い立たせた言葉「今日の金メダルは、今まででいちばんうれしい」
posted2022/11/15 17:02
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
ショート『戦場のメリークリスマス』で1位に
祈るようにぎゅっと両手を膝の上で組む。
フリーの得点が出る。その数字を目にした瞬間、右手を宙に何度も突き上げた。合計得点と順位を確認し、三原舞依の目には自然に涙があふれた。
フィギュアスケートのグランプリシリーズ第4戦、イギリス大会女子シングルで三原が優勝した。2016年10月に初めてのグランプリシリーズ出場となったスケートアメリカから6年目にして手にした、シリーズ大会での初優勝でもあった。
『戦場のメリークリスマス』で臨んだショートプログラムで1位となって迎えた11月13日のフリー。
ショートプログラムで首位に立った三原は最終滑走で演技をスタート。曲は『恋は魔術師』。
冒頭のダブルアクセルを決めると、その後もジャンプを1つひとつ、着氷させる。
情熱を十分伝える表現とともに、定評のあるスケーティングに乗せて、情熱のこもった表現がリンクに広がる。時間をかけて培ってきた演技を披露し、それを称えるように、拍手と歓声が響く。終盤、コレオシークエンスのスパイラルで見せた笑顔は、この日の演技を象徴するかのようだった。
自分の体はどこなんだろうというくらい緊張
フィニッシュ。三原は両手を振り下ろす。その直後の小走りで駆け出すような動きにも、演技への手ごたえが表れていた。
得点は145.20点。昨シーズンの四大陸選手権で出した自己ベスト145.41点にほぼ等しい点数を得た三原は合計217.43点で優勝を飾った。
それはいくつもの重圧を乗り越えてつかんだ優勝だった。
「自分の体はどこなんだろうというくらい緊張していました」
1位でフリーを迎えたことで6分間練習から重圧はあったと言う。