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「引退したくない!」鄭大世が引退発表翌日に古巣・川崎のスタジアムで絶叫した理由「実は等々力に来るのが、しのびなかったんです」
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byYuki Suenaga
posted2022/11/08 11:00
10月28日、今シーズンでの引退を発表した鄭大世に、引退決断の理由と発表翌日に飛び出した「引退したくない!」発言の真意を聞いた(全3回のうち、第1回)
僕の悔し涙も意味のあるものだったのかな
――鄭大世さんの公式ツイッターの背景写真は、憲剛さんのその写真ですよね。
本人のツイッターアカウントの背景写真 本人のツイッターより
鄭大世 あの喜びを忘れられないから。あれだけはずっと変えたくない。自分がそこにいなかったことが寂しかったけど、僕らが味わった悔しさも伏線となり、17年の初優勝があったと思います。フロンターレの記憶は、美しいものになっています。僕の悔し涙も意味のあるものだったのかな。
――17年のプロキャリアを過ごすなか、数え切れないほど涙を流してきたと思います。鄭大世さんにとって、涙とは何ですか。
鄭大世 自分の感情表現。涙は我慢しないようにしています。もともと僕は喜怒哀楽が激しい性格です。調子がいいときは慢心もするし、調子が悪くなれば悲しくもなり、悔しさも覚えます。鄭大世という人間を隠さずにずっと出してきました。むしろ、隠す必要がないと思っています。
引退を決めたあと、泣かなかった理由
――流してきた涙に後悔はないですか。
鄭大世 一切ないです。涙を流して、恥ずかしいと思ったこともないですね。
――自分の感情に素直に生きてきた鄭大世さんですが、感傷的になってもおかしくない現役引退を決めたあと、「泣かなかった」と話していました。
鄭大世 未練なく引退する決心がついたので。引退する悲しさよりも、むしろ、やっと解放されるという安堵感のほうがあったので。このタイミングでスパイクを脱ぐことができて、良かったと思っています。
10月28日、FC町田ゼルビアから発表された、現役引退を知らせる長文のメッセージには、隠し切れない思いがにじんでいた。自らを「エゴイストなくせに馬鹿みたいに繊細で感情的」と表現する「鄭大世の人間味」とは――。第2回は最後のメッセージから掘り下げる。〈#2、#3へ続く〉