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「引退したくない!」鄭大世が引退発表翌日に古巣・川崎のスタジアムで絶叫した理由「実は等々力に来るのが、しのびなかったんです」 

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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photograph byYuki Suenaga

posted2022/11/08 11:00

「引退したくない!」鄭大世が引退発表翌日に古巣・川崎のスタジアムで絶叫した理由「実は等々力に来るのが、しのびなかったんです」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

10月28日、今シーズンでの引退を発表した鄭大世に、引退決断の理由と発表翌日に飛び出した「引退したくない!」発言の真意を聞いた(全3回のうち、第1回)

あの瞬間、僕のストーリーは完結した

――Gゾーンから離れるときは名残惜しそうでした。

鄭大世 戻りたくても、戻れないんだなと……。そう思いながら、水色の陸上トラックを後ろ髪引かれる思いで歩いていると、「おかえり」という言葉が耳に入ってきたんです。「おかえり」と。気が付いたら、涙があふれ出ていました。後日、クラブ公式のSNSで映像を見返して、また泣きましたから。映像を見て、いまでも何回も泣いています。あのとき、プロサッカー選手の鄭大世が生まれた場所は、ここなんだなと再確認したんです。あれだけ活躍できた、いや活躍させてもらったのは、フロンターレのチームメイト、監督、スタッフ、そして応援してくれる人たちのおかげだなと(4シーズン半在籍でJ1リーグ112試合出場・46ゴール)。いま、僕には妻がいて、2人の子どもがいます。10月29日のヴィッセル神戸戦も家族4人で観戦していたのですが、隣に座る小学校2年生の長男に言ったんです。「このスタジアムのみんながパパのことを知っているんだよ」って。あまり聞いていなかったかもしれないけど、現在サッカーをしている息子に何回も自慢しました。熱気が充満する等々力で活躍してきたことが誇らしくて。

――試合後、鄭大世さんの家族もチャントを聞いていたのですね。

鄭大世 そう、妻も嗚咽をもらしていました。小学生の息子と娘が、その姿をじっと見ていたようですね。父親として、子どもたちにプロサッカー選手としての引き際を見せることができて本当に良かった。試合後、自宅に帰り、家族4人で夕食を取っているときでした。小学校に上がる前までは、サッカーにあまり興味を示さなかった息子が「将来はサッカー選手になりたい」と口にしたんですよ。あの瞬間、「僕のストーリーは完結したな、完璧な人生を送ってこれたな」と思いました。

プロ人生初の涙、悔し涙、嬉し涙…

――プロキャリアをスタートした川崎F時代には思い出がたっぷり詰まっていますね。「涙もろい」と自認する鄭大世さんですが、プロ人生で初めて流した涙は覚えていますか。

鄭大世 2006年7月19日のJ1初ゴールのときですね。結構なスーパーゴールだったと思いますが、やっと取れたか、という思いでした。きょうの取材前も偶然、映像を見ていたんです。カシマスタジアムで空を見上げたとき、ほっとして、安堵の思いで涙がこぼれてね。背中から伊藤宏樹さんが抱きついてくれ、箕輪義信さんは最後まで抱擁してくれていました。実は見えないところでは、その前にも泣いているんですけどね。

――いつ泣いていたのですか。

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