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敗れた相手も思わず「お前の蹴りヤバイだろ」…皇治戦での炎上から一転、ムエタイ伝道師・梅野源治はなぜRIZINで“覚醒”したのか
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2022/11/01 17:00
10月23日の『RIZIN.39』、梅野源治はトレント・ガーダムにカーフキック一発でTKO勝ち。口癖の「やばいだろ」はTwitterトレンド入りを果たした
敗れたガーダムまで「お前の蹴りヤバイだろ」
会見で筆者が「トークが覚醒したけど、そのきっかけは?」と質問すると、梅野は「きっかけはRIZIN」と断言した。「勝つか負けるか」だけではなく、「世の中にどれだけ影響を与えるか」というスケールも用意された世界であることを把握したからこそ、梅野はオンリーワンともいえる“梅ワールド”を構築しようとしている。
何があっても梅野は前を向く。
「やっちゃったこと(不満足な判定ながら皇治に敗れたこと)は変わらない。言ったことも後悔はしていない。そういうことを残念がるより、その後どうやって自分の向かいたい方向に向かうか。こう考えると、“幸梅”以外のなにものでもない」
RIZINで“梅ワールド”を拡大することで、梅野はムエタイの醍醐味を改めて世に問いかけようとしている。
「日本国内のムエタイの選手もすごく頑張っている。真面目な話になっちゃうけど、『お前らのやっていることはすごいぞ。やっていることは間違っていない』とほめてあげたい」
次世代のムエタイ選手たちに梅野はどんな形であれ、世間と勝負することを促す。
「たとえ僕みたいに炎上したとしても大丈夫。明日も明後日も来るし、いつでも行動ひとつで流れは変えられる。今後は国内のムエタイファイターに少しでも光が当たるような環境を作っていきたい」
独演会の結びで、梅野はRIZINにムエタイ王座の新設を訴えた。その発言を受け、榊原信行CEOは「ヒジを見たかったよね」と時期尚早を示唆したが、目の前に困難が立ちはだかれば立ちはだかるほど、梅野の進撃は勢いを増す。開き直ったムエタイ伝道師は強い。大晦日は“超爆梅”にバージョンアップできるだろうか。
それを暗示するかのように、敗れたガーダムはツイッターで「お前の蹴りヤバイだろ」と日本語で呟いた。
増殖する一方の“ベビ梅”たちの脳内でも「やばいだろ!」はリフレインしているはず。こうなったら、もう止まらない。大晦日に向かって梅野も叫ぶ。
「やばいだろ!」