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敗れた相手も思わず「お前の蹴りヤバイだろ」…皇治戦での炎上から一転、ムエタイ伝道師・梅野源治はなぜRIZINで“覚醒”したのか
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2022/11/01 17:00
10月23日の『RIZIN.39』、梅野源治はトレント・ガーダムにカーフキック一発でTKO勝ち。口癖の「やばいだろ」はTwitterトレンド入りを果たした
当時のムアンタイはムエタイの二大殿堂ルンピニーとラジャダムナン(ボクシングに例えると、日本がWBAとWBCしか認可していなかった時代の両団体と思ってもらえればいい)でともに1位に輝いていたトップ中のトップ。そんな強豪を相手に4R、梅野はヒジで大流血に追い込んだ挙げ句、右ストレートでダウンを奪う。それでも立ち上がってきたムアンタイに梅野はヒジとパンチの連打を浴びせ、レフェリーストップを呼び込んだ。殺気、斬れ味、畳みかけ……どれをとっても文句なしの梅野のベストバウトだった。
皇治戦の判定に見せた怒り「もうちょっと勉強しろ」
この一戦はタイでも大々的に報じられ、梅野の知名度を一気に高めることになった。2016年10月、梅野は虎の子のラジャダムナン王座も手にする。外国人選手がラジャのチャンピオンベルトを獲得したのは史上6人目という快挙だった。
ムアンタイとの激闘やラジャ王座奪取で、梅野は少なくともヒジ・ヒザありの世界では一目置かれる存在になったといっていい。しかしながら、世間一般の誰もが知っている存在になったとはいいがたい。
梅野はそのことを肌で感じていた。
「ムエタイの本場のチャンピオンになっても知名度はなかなか上がらない。(格闘技の世界は)実際の実力と知名度が伴っていないことも多い」
だからこそ梅野はムエタイの世界から一歩外に出た。その第1弾がRISEでのモダン系キックへの挑戦であり、続く第2弾はMMAが主流のRIZINへの参戦だった。梅野がRIZINに上がるのは今回で3回目。過去2回は皇治との連戦で、いずれもモダン系のルールで闘ってきた。
事件は今年3月に行なわれた2戦目の試合後に起こった。判定が2-0で皇治に上がるや、梅野はリング上で「嘘だろ?」と信じられないような表情を浮かべたのだ。
皇治戦後、梅野は思いのたけをぶちまけた。
「ジャッジはもうちょっと勉強した方がいい」
ちなみに現地のプレスルームのモニターで取材していた筆者の採点はドロー。3R、スリップと見なされた梅野のダウンが勝負の分かれ目となったのか。その一方で、1Rなどの梅野の攻勢点はポイントとして評価されなかったので、彼は不満を述べた。