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阿部一二三vs丸山城志郎、“10度目の激突”から見えたライバルストーリー…敗れた丸山に残された“逆転のチャンス”
posted2022/11/07 17:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
JIJI PRESS
'24年パリ五輪の試金石となる柔道の世界選手権が10月6日から13日までウズベキスタン・タシケントで開催され、男子66kg級の決勝は東京五輪金メダリストの阿部一二三(パーク24)と世界選手権2連覇中の丸山城志郎(ミキハウス)が激突。10度目の対戦にして初めて世界選手権の決勝で相まみえ、阿部が4年ぶり3度目の頂点に立った。
「パリ五輪まで2年を切っているので、すごく大切な大会。苦しい試合もあったが、しっかり勝ち切れた。うれしい」。優勝を決めて両手を掲げる姿は誇らしげだった。
立ち上がりは攻勢に出る丸山に押され、先に指導2と追い込まれた。しかし、そこからの冷静さと瞬発的な切れ味はさすがだった。残り1分45秒を切ったところで丸山が内股に入ったところを小外掛け。これが「技あり」となり、優勢勝ちした。阿部はこれで丸山に4連勝。通算でも6勝4敗とし、「自分の方が強いと証明できた」と胸を張った。
貫禄がついた阿部と諦めない丸山
'17、'18年に世界選手権を連覇したが、'19年世界選手権の準決勝で敗れるなど丸山との直接対決で一時は3連敗を喫し、東京五輪の代表選考レースで後塵を拝した時期もあった。だが、崖っぷちから盛り返し、'20年12月の代表決定戦では柔道史に語り継がれる24分間の死闘を制して東京五輪切符を手にした。その経験が阿部を強くしている。
今回の対戦では10度目にして初めて延長戦に突入することなく決着がついた。阿部は12月のグランドスラム東京でも優勝すれば、来年5月にカタール・ドーハで開催される世界選手権の代表に内定する見込みだ。
ただ、「直接対決で勝ってパリへ近づけた」と語るように阿部がリードしているのは間違いないが、丸山とて引き下がるつもりはない。今大会では準々決勝で東京五輪銀メダルのマルグベラシビリ(ジョージア)を破り、準決勝では同銅メダルのアン・バウル(韓国)を下している。実力者を連破した丸山に“世界2位の実力”があるのは明らかで、来年の世界選手権代表には阿部とともに選ばれると見る向きが多い。逆転のチャンスはまだ残っている。
貫禄がついた阿部と諦めない丸山のライバル劇はまだ続く。好敵手のいるアスリートは強くなる。名勝負が競技の魅力を押し広げる。