ボクシングPRESSBACK NUMBER
師匠・辰吉の薬師寺戦を超えられるか? 京口紘人が“因縁の相手”寺地拳四朗との日本人王者対決を語る「立場は自分の方が格上」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byShunsuke Mizukami
posted2022/10/31 17:01
寺地拳四朗(WBC世界ライトフライ級王者)との統一戦に挑むWBA世界ライトフライ級スーパー王者・京口紘人。寺地の実力を認めながらも、圧倒することを誓った
日本人同士の統一戦は、2012年の井岡さんと八重樫さんの統一戦以来2度目ですよね。あの試合の時は大学1年生で、「いや、すげえ」と思いながらテレビの前で見ていました。今度は自分が統一戦というのは感慨深いですね。辰吉対薬師寺戦とも比較されると思います。当時はボクシングが人気スポーツで、辰吉丈一郎というスターもいたので、あの頃の熱狂の方が上という人は多いとは思います。
それでも僕たちの対戦は井岡さんと八重樫さんの統一戦、そして辰吉さんと薬師寺さんの試合以上のビッグマッチになるだろうという思いはあります。
拳四朗選手は一度、負けてしまってはいますけど、8度防衛した実力のあるチャンピオンだし、自分はまだ無敗で伝統あるリングマガジンのベルトも持っていますから。だからこそ、しっかり盛り上げたいです。
ジョーちゃんの金言「なるって言い切れ」
ジョーちゃん(辰吉)の話をしておくと、現役で活躍されていた頃の僕はまだ小さかったので、その存在を最初にしっかりと知ったのは『ガチンコファイトクラブ』だったと思います。ジョーちゃんに何度も言われたのは、「世界チャンピオンになりたいじゃなれんぞ。なるって言い切れ」ってことです。それは頭にこびりついてます。
13歳のガキに真正面から言ってくれてたんだから、今思えばすごい感謝ですよね。今の僕が同じ立場だったとして、そのくらいの年齢の子にあれだけの熱量を持って接することができるか、と言われたら難しいと思います。
自分はジョーちゃんにそう言われて以降、「なりたいじゃなれん、なるんだ」という言葉を心に置いて取り組んで来ました。応援してくれる周りの人間にも、「世界チャンピオンになるから」と言ってきました。これはどの分野でもそうなんでしょうけど、「世界王者になりたい」と思っている人間がごまんといる世界で、「なる」と言い切っている奴の方が強いんですよね。
カリスマって言えば簡単ですけど、ジョーちゃんは誰が見ても納得するものを持っているんじゃないですか。1つ1つの言動が人を惹きつけると思いますし。気に留めてしまうというか、あの人が何かをすると、今でも興味ををそそられる。薬師寺戦も負けはしましたけど、あの試合の主人公というのは辰吉丈一郎だなと今でも思います。すごいじゃないですか、勝った薬師寺さんではなく、負けてなお辰吉の試合だなんて。