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師匠・辰吉の薬師寺戦を超えられるか? 京口紘人が“因縁の相手”寺地拳四朗との日本人王者対決を語る「立場は自分の方が格上」
posted2022/10/31 17:01
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Shunsuke Mizukami
史上最大級の日本人王者対決が迫っている。11月1日、さいたまスーパーアリーナで、WBC世界ライトフライ級王者・寺地拳四朗(30歳)対WBA世界ライトフライ級スーパー王者・京口紘人(28歳)という統一戦のゴングがついに鳴るのだ。
2012年の井岡一翔対八重樫東、1994年の辰吉丈一郎対薬師寺保栄などと並び、日本ボクシングの歴史に刻まれる一戦。ビッグファイトを前に、主役のボクサーは何を考えているのか。2人の言葉の一部は現在発売中の本誌1061号にダブルインタビューとして掲載されているが、ここでは京口のインタビューを完全版という形で再構成した。
拳四朗との因縁、師匠と慕う辰吉の影響、同い年の井上尚弥との友情、そして自身の今後についてなど、話題は多岐に及んだ。そのきっぷの良い正直な語り口からは、ここまでのキャリアで最大の戦いを、さらに明るい未来につなげていこうとする28歳の王者の意欲と野心が分かり易い形で伝わってくる。
◇◇◇
拳四朗選手との今回の試合は、これまでの自分のボクシングキャリアの中では一番の試合だと思っています。ただ、ゴール(最終目的地)というわけではないんですよ。少なくとも今は違いますね。(昨年9月の矢吹正道戦で)王座陥落するまでは自分の中で拳四朗選手が1番という位置づけでしたけど、自分は海外で連続KO防衛していて、彼は負けて、まあ返り咲きはしましたけど、(そういう流れを経て)1番ではなくなったかなと思います。僕は今、もっと上のステージに立てるし、もっと大きな試合が実現できる立ち位置にいるという気持ちはあります。
とはいえ、拳四朗戦は長年、期待されていた試合だと思うし、その期待感は自分でも感じてはいます。拳四朗選手がすごく強いというのは認識していますよ。距離感を掴むのがうまくて、見た目以上にタフ。負けた試合でも最後はストップされたけど、後半もしっかり動いて盛り返してました。ジャブがいい、距離感がいいとかいう以上に総合力が高くて、世界戦を11度も経験しているキャリアもあります。
矢吹選手とのリマッチでは五分五分かやや矢吹選手に分があるかなと思っていたのですが、拳四朗選手がよりアグレッシブにスタイルチェンジして、それがハマった試合でした。1ラウンドを見た時点であっと思いました。これはちょっと矢吹選手は不利になるかなと思ったら、3ラウンドでKO。拳四朗選手が強さを見せた戦いでしたね。
そんな拳四朗選手の実力を評価していないわけではないですけど、しかし、位置づけとしては、もう現時点では自分の方が格上という意識はあります。実力がどうとかいうよりも、立場的には、ということです。
拳四朗選手とはプライベート(の付き合い)はないですし、仲がいいというわけではないですけど、3年近く前に彼が僕のYouTubeに出たことがあったんです。当時は自分がライトフライ級に上げたばかりで、彼はもう6、7回防衛していた頃。「いずれタイミングが合えば対戦したいですね」って話はしていました。でも向こうは防衛回数で具志堅用高さんの13回を抜くことに執拗にこだわっていたので、前向きじゃないというか、見向きもしない感じでした。
そして、僕が結果を出していく中で彼は陥落。リマッチで世界王者に返り咲いた途端、「統一戦をやりたい」と掌を返してきた。いやいや、こっちは勝ち続けて評価を上げていたんだから、あなたももう少し上げてよ、といった感じではありますね。