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「アリガトウゴザイマス、スズカ」元王者セバスチャン・ベッテルが愛する“神の手で作られたコース”鈴鹿で見せた鬼気迫るラストラン
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2022/10/18 11:03
鈴鹿への愛とファンへの感謝を胸に、ベッテルは元王者らしい気迫のこもった走りを披露した
レースは直後に赤旗が出され、中断。1時間が経過しても再開の目処が立たない。雨の中、それでも客席を離れることなく、静かに再開の時を待つファンの姿に胸を打たれたのはベッテルだけではなかった。アルファロメオのスタッフは白地の横断幕に赤いスプレーでこう書いた。
「YOU ARE THE BEST(あなたたちは最高)」
すると2時間後、レースは時間を短縮する形で再開される。そのレースで優勝したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)にも劣らぬ、素晴らしい走りを披露したのがベッテルだった。
6位フィニッシュの素晴らしい週末
16番手からスタートしたレースで真っ先にピットインして、雨と晴れの中間に履くインターミディエイトタイヤに履き替え、大きくポジションを挽回。最終ラップの最終シケインではスタート直後に接触したアロンソと再び並走しながら、0.011秒先行してフィニッシュ。今シーズン自己最高位タイとなる6位で最後の鈴鹿を終えた。
レース後、再び「一番」の鉢巻をつけたベッテルは言う。
「2時間もの雨の間、外で座っているのはかなり大変だったに違いない。だから、半分だけだったけど、そんなファンの皆さんと一緒にレースすることができて良かった。ここで走るのが最後というのはちょっと寂しいけれど、本当に素晴らしい週末だった。あなたたちこそ、一番だ」
そして、日本語でこう感謝し、鈴鹿を後にした。
「あなたたちは最高です。みんなと別れるのは寂しいです」
鈴鹿のファンもこんな思いで別れを惜しんでいたことだろう。
「ベッテル、ありがとう。あなたがいた鈴鹿は最高でした」と。
いつの日か、また会おう。
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