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「好きな選手はメッシ! サッカーなら170cmでも世界トップで活躍できる」バスケ日本代表・富樫勇樹が考え続ける“身長”という才能
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渋谷編集室 with ABEMASports Graphic Number with ABEMA
photograph byYuki Suenaga
posted2022/10/19 11:00
身長167cmながら、日本代表の司令塔として活躍を続ける富樫選手。同じくらいの身長で観客を魅了するメッシの大ファンだという
――たしかに前回のロシア・ワールドカップでは、イングランド代表がバスケットの戦術を取り入れてセットプレーでゴールを量産し、ベスト4に進みました。
富樫 そうらしいですね。詳しい守り方はわからないのですが、昔からサッカーを見ていて、セットプレーの場面ではバスケのようにマッチアップがあるんだろうなって想像していました。だから、攻撃側の選手がクロスしてゴール前に走り込んだり、スクリーン(1人の選手が相手の壁となり、味方のマークを外すプレー)を活用すれば、もっとチャンスが広がるんじゃないかって。サッカーの場合、たとえフリーになったとしても、そこにピンポイントでパスを届けるのは、バスケの100倍くらい難しいとは思うんですが、世界のトップレベルの国は、他競技にまで目を向けて進化しているんでしょうね。
日本代表の心理とは?
――11月1日の日本代表ワールドカップメンバー発表まで、およそ1カ月です(インタビュー時)。バスケット選手の場合は、オリンピックやワールドカップの1カ月前、どんな心理状態なのでしょうか。
富樫 バスケの場合も、サッカー日本代表のみなさんも、大半の選手は自分が選ばれるか・選ばれないかはわかっていると思います。4年にわたってチーム作りをしてきているので、監督は自分をどれくらいの戦力として考えているのか、理解しているはず。ただし、残り1、2枠を争う選手たちは、緊張感を持っているでしょうね。ここにベテランを入れるのか、若手に経験を積ませるのかは、監督の考え方次第になりますから。特にサッカーのワールドカップは世界でも最大のスポーツ大会です。ここに出られるかどうかで、人生が大きく変わるだろうから。
メディアではいろいろと報じられますが、僕らバスケ日本代表の場合は、そういう当落線上にいたとしても、浮いた行動やチームの和を乱すような選手はいませんでした。もちろんチーム内の競争は激しいですけど、全員がチームのことを第一に考える。これは当たり前のことで、きっと森保ジャパンの選手たちも同じだと思いますね。
――富樫選手は2019年のバスケットボール・ワールドカップ直前合宿中に右手を骨折し、チームを離脱する経験をしています。当時の心境は?
富樫 いろいろな人から気を使われて、「連絡できなかった」という人もたくさんいました。でも、個人的には絶望感もなかったし、翌日には気持ちを切り替えていました。練習中に全力でプレーした上での結果だから仕方ない。むしろ人生初の手術が怖いな、って(笑)。出場できなかったワールドカップも、「自分がいれば」と考えることもなく、純粋に日本を応援していました。
ただ唯一、怪我をした直後にフリオ・ラマス監督(当時)と話したときだけは、落ち込んだかな。ラマス監督は2017年の就任以来、毎試合、僕をスタメンで使ってくれました。期待も感じていましたし、それに応えたかった。でも、怪我で大事な本大会に出られなくなった。ラマス監督が感情的になっている姿を見て、悔しいというか、申し訳ない気持ちになりましたね。