猛牛のささやきBACK NUMBER
「育成では行かないと書いていたので…」2年前のドラフトで悩んだ大卒投手がリーグ連覇に貢献するまで「オリックスに来たのは正解だった」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byJIJI PRESS
posted2022/10/12 11:01
7月に支配下登録を勝ち取り、オリックス救援陣の新たな柱としてリーグ連覇に貢献した宇田川優希(2020年育成ドラフト3位)
「これでよかったのか?」と思ったこともある。1年目だった昨年は、ウエスタン・リーグでわずか1試合しか投げなかったからだ。
「自分と同い年で社会人に行った人たちがすごく活躍しているのを見て、『社会人に行っていたら、変わっていたのかな』と思ったこともありました」
しかも一緒に育成で入団した佐野は、1年目の開幕前に早々と支配下登録され、開幕一軍入りしていたのだから、置いてけぼりにされたような気持ちになっても無理はない。
25年ぶりのリーグ優勝を果たした一軍の様子は、別世界のことのようにテレビで見ていた。
「すごいな、自分も一緒に戦いたいなという気持ちはあったんですけど、まずファームの試合でも投げていなかったので、すごく遠いところにいるなと感じていました」
肉体改造→球速はMAX158キロに到達
だが2年目、宇田川の運命が大きく動き出す。
今年3月に新型コロナウイルスに感染し、10日間の隔離生活を送った間に体がやせ、筋肉量も大きく減少してしまった。それを機に、復帰後はウエイトトレーニングに力を入れ肉体改造に取り組んだところ、ストレートの威力が格段に増した。以前は152キロほどだった球速も、常時150キロ台中盤が出るようになり、最速は158キロを記録した。
「もともとまっすぐには自信があったんですけど、去年はファームやフェニックス・リーグでまっすぐを打たれて、『プロのレベルでは通用しないのかな』と思っていた。でもコロナ明けの肉体改造のおかげで変わりました」
7月28日に念願の支配下登録を勝ち取ると、8月3日の西武戦でプロ初登板を果たす。一発のあるクリーンアップにも臆することなく自慢のストレートを投げ込み、山川穂高、ブライアン・オグレディから三振を奪う圧巻のデビュー。ソフトバンクとの熾烈な優勝争いの中、チームを救う働きを積み重ね、リリーフの柱の1人となった。初登板から約2カ月で19試合22回1/3に登板し、失点はわずか2、防御率0.81という安定感だ。
「細かいコントロールはまだないので、とにかく四死球から崩れないように、ストライクゾーンで勝負することだけを、どのバッターに対しても考えて投げています」と言う。
それはストレートに自信を持っているからこそだが、加えて、フォークの幅を広げたことが飛躍につながった。守護神・平野佳寿の姿がヒントになったという。